2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

吐息

なるほど、あの時間にわざわざ小一時間かけて、あんなに立派なトロを僕のために買ってくるはずがないと思っていた。僕の食卓に上ったのはいつもの精進料理で、立派なトロの固まりはわざわざクリの鼻先で匂わせてから、火を通し始めた。悔しいから値段を見て…

疲労

これは希望なのか。一回りも年上の男性が、疲れなんか全く感じないと言う。疲労の中で毎日溺れそうになっている僕からしたら、あの断言は信じられないレベルではあるが、彼の説明を聞いて納得した。1日中することが無く、ボーッとしているらしい。すると疲…

人は人によって傷つけられ、又皮肉にも人によって癒されもします。現代のストレスはそのほとんどが家庭と職場なのです。ごく普通に暮らしている人の、ごく普通の言動に僕は感動することが多いのです。如何にもという人のそれにはほとんど心を動かすことはあ…

作為

「もう大和さんのギターが聴けなくなるな」嘘でもいいからそう言ってもらえれば有り難い。でもとても嘘を言うような人ではないから、本心なのだろうか。ギターなどというものを持てる世代ではなかっただろうその人に評価されたのは嬉しかった。お別れの日ま…

綿菓子

同じような言葉を、それこそ何十年も前に聞いた。今でこそ衰退して1社も残っていないが、僕が帰ってきた頃はまだ数社の造船所が牛窓にはあった。ある造船所の設計士と知り合ったのだが、彼の仕事ぶりに感嘆した僕に返ってきたのは「船を造るより漢方薬を作…

印鑑

ニーチェの「生きるべき”何故”を知っている者は、ほとんどすべての”いかに”に耐える」と言う言葉を引用して、渡辺和子先生は「生きなければならない理由がある人は、どんなに苦しい情況の中でも、生きていく方法を見出せれるのです」と言われている。どちら…

鉄槌

「一番先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい」1月くらい前に、声をからして走り回った人達に教えてあげたいようなある方の言葉があるが、僕はこれなら守れそうだ。いいことを教えてもらっても、なかなか実行できなく…

表紙

ああ、びっくりした。何気なく自分のブログを開いてみたら、全く変わっていた。最初は消えたと思ってしまって、一瞬動揺したが、自分のものであることはすぐに分かった。恐る恐る、昨夜まで当たり前のようにやっていた作業を確認してみたが、全部同じように…

働き者

自分では働き者と思っていたが、意外とそうではないことがこの連休で分かった。 少しだけ人並みに働かないでおこうと連休前にチラシで、連休中は午前10時から午後5時まで開局していると告知した。朝2時間、夜3時間余裕があり、何をして時間を潰そうかと…

無防備

レジで会計をする父親の嬉しそうな様子に思わず涙ぐんでしまった。漢方薬を作り説明をしてすんだから調剤室に下がって様子を見ていたのだが、数年来初めて見る光景だった。何かと誰かと結びつけて感動したのではない。ただ単に嬉しかったのだ。父親の思いが…

心臓マッサージ

ああ、なんて可愛いのだろうと思う。でもそれは僕の子供達ではない。巷で遭遇する家族のようにいつも一緒におれたら、それはそれで幸せなのだろうとも思う。ただそれはきっと息子夫婦には息苦しいだろう。だから僕は全くその様な選択肢を一度も考えたことが…

浣腸

シャッターを開けるとすぐにタクシーが横付けにされ、老婆が浣腸を取りに来た。慌てていたから本人が使いたいのか、家で旦那が待っているのか分からなかったが、たった260円のものを買いに来るために、恐らくその10倍近いタクシー代を払うのだろう。タ…

中途半端

精も根も尽き果てて、あるおばちゃんが娑婆に帰ってきた。お久しぶりですと言う挨拶の通りまさに久しぶりだった。親分肌の女性で、何人も薬局に紹介してくれて、なかなか難しい症状を勉強させてくれる人だ。その親分肌を買われたのかどうか知らないが市長選…

睡眠

珍しい光景だった。薬を買って出ていくときにありがとうと言ったのだ。もう30年来の常連と言ってもいい人なのだが、礼を言うようなタイプの人間ではなかった。どちらかというと横柄な態度で、礼は言わないが、しばしばやってきて色々な漢方薬を持って帰る…

余程訓練された犬なら、目の前におかれた餌を我慢することが出来る。ところがさすがに人間は訓練しなくても目の前の餌に惑わされることはない。ところが中にはかなり動物的な人がいて、食欲のまま振るまいいつもしっぽを振っていた。ところが与えられる餌が…

わだかまり

やっとこれで30年来のわだかまりが取れた。所詮その年齢で訪ねてはいけない街だったのだ。訪ねた僕たちの方が悪かったのだ。 大学を卒業した春、後輩の運転で岐阜から富山経由で金沢の街に入った。唯一兼六園を見学し、その後はいつものことだがほとんど中…

全開

神経質なところがあるのに、ずぼらなところも多い。このような性格の人は意外と多いのではないか。僕のそのままを述べただけだが、勝手に拡大解釈している。ところが中には徹底して、厳格な人もいて、どこからも侵入を許さないような人もいる。その性格だか…

後悔

そこの場所で、僕には二人の気になる若者がいた。今となってはほとんど後悔に近い。ただ、その空間と僕の日常では全く立ち位置が違うから折り合えるのはかなり難しいような気がする。 二人とも明らかに心を病んでいた。僕はそこの場では職業を明らかにするこ…

脳貧血

日本人の6割が、朝目が覚めた時から身体がだるいそうだから安心した。僕の人生で果たして何時目覚めが良かったのだろうと考えてみるが定かではない。忘れているだけかもしれないが、さすがに子供の時や青年の時はそんなことはなかったと思うが、30代には…

恩恵

やっぱりかと思った。もう何年も痛み止めでごまかしながら、いや現在はそれも効かなくなって薬はいっさい飲んでいない。2度ヘルニアの手術をしてそれでも日々の重労働で腰を痛め続けている。腰を患うとかなりの確率で首を患ってくる。首にこなければいいが…

取り柄

僕にとっての最後のセールスと言ってもいいかもしれない。昔ながらの薬局形態をとっているところが少なくなってきたせいか、セールスにも幾度の淘汰の波が押し寄せている。過去3回の肩たたきにも耐え、しぶとく生き残った彼も、僕の薬局みたいな小さな取引…

事故

1時間の間、彼は僕と向かい合って喋ったり、パソコンに向かって操作したりしていたが何をいったい思っていたのだろう。クロネコヤマトのシステム関係の仕事をしているらしいが、色々良心的に説明してくれた。自分の仕事とは直接利害がないことでも快く教え…

習慣

偶然同じ話題が重なった。 午前中漢方薬を取りに来た若いお母さんが「知り合いに中国人のお母さんがいるのですが、彼女は日本人が飲み物を冷蔵庫に何でもかんでも入れて冷やすことが理解できないと言っていた」と教えてくれた。実は彼女は鼻炎家族なのだが、…

新発売

医師の6%が自殺について考えていたという医師会の調査を読んでいたら、丁度セールスが新発売になった鬱病薬の説明書を持ってきた。新発売だから1個仕入れてくださいとのことだが、薬の内容の重さとは裏腹に、単なる商品としての価値しか感じられない。所…

音響

以前利用していた楽器店が、軒並み潰れたような気がする。今僕の行動範囲で楽器などを買うことが出来るのは、岡山市の繁華街にある、それも有名なシンフォニーホールの中にある楽器店だけだ。そこはヤマハの教室などもやっていて、バックボーンがしっかりし…

砥石

お母さんの話を聞きながら涙が自然ににじんできた。仕事中だし、薬局の中だから、取り乱したところは見せれないが、文句なしで嬉しかったのだ。 所詮薬局だから、出しゃばったことはしてはいけないが、あまりにも気の毒で周辺テーマではなく、もろ主たる訴え…

一人旅

田舎ののんびりした薬局なのに、それなりに忙しく、山陰から2泊3日で訪ねて来てくれた青年を充分もてなすことが出来なかった。後日お母さんから「ヤマト先生が 毎日どれだけ忙しく仕事をしておられるのかわかったらしく自分もがんばろうと少したくましくな…

噴火

母が3時頃薬局にやってきたとき、珍しくテンションが低かった。いつもならこちらが用事を頼む前に向こうから必ず何をするか催促があるのだが、今日は何かしらうつろだった。僕はその理由を確かめるほど孝行息子ではないが、さすがに妻と娘は気になったみた…

弱肉強食

鳥そのものを観察して楽しむ趣味はまだ無いが、さえずりがどこからともなく聞こえる朝、幾種類かの鳥たちが自由に飛び回る光景を目にすると、僕の戦いの神経にまだ起きないでとお願いしたくなる。長い間同じ環境で暮らしてきたのに鳥の声にも姿にも気がつか…

亀裂

その気付きというか、発想というか、興味というか、人によって、いや職業によって、いや性格によって違うものだ。 薬を作って調剤室から出てくると、薬を待っていた男性が「このイスは足が折れているね」と言う。折れていると言われても、まだ錆びもせず結構…