2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

条件

ひょっとしたら僕は大きな勘違いをしていたのかもしれない。 休日で暇だからすることがない。いつもは若夫婦に任せきりにしている処方せん薬をぼんやり見ていて、目が抗ガン剤にいった。最近ユーチューブで耳にした「抗ガン剤マフィア」という言葉が耳に残っ…

無為

スーパーのゲームコーナーのある一角にちょっとした人だかりが出来ていたから何気なく僕も覗いてみた。その場には全く相応しくはないのだが、トイレがゲームコーナーの奧にあるというだけでしばしば僕はそこは通る。 なんて言う名前のゲームか知らないが、又…

拙文

「模型のような電車が眼下を走り、雲が手を伸ばせば届くくらいの所に浮いていた。それだけで僕は明らかに日常を脱出していた。城山と書いて「じょうやま」と読む。これも僕には新鮮だった。岡山県を対角線にやってきた甲斐がそれだけであった。 遠慮がちな芝…

正座

「なんかわからんけど、先生、頑張って作って」と、ゆっくりとした口調で若干訛りながら最後にこう言って電話を切った。なんとも言えぬ倦怠感を醸し出す女性だが、言葉の向こうに秘めたる魅力も見える。本人はそれをやる気のなさだとか無気力で片づけてしま…

墓石

余程この人を恐れている人が多かったのだと思う。政治家然り、役人然り、検察然り、マスコミ然り。それぞれの分野で長年うまい汁を吸っていた人達が、その茶碗をもって行かれる危惧を一斉に抱いたのだ。みんながぐるになればこうしていとも簡単に人一人など…

空の巣

僕よりはるかにあらゆる面で恵まれいる方と話をしていた。話の成り行きで連休をどう過ごすかという話題になった。 その方はお嬢さんが帰ってこられるらしくて、どこにも出かけないと言っていた。家にいて迎えてあげるってことだろう。ところが「帰ってきても…

斜め

先週の土曜日の夕方のこと。ある患者さんと娘のやりとりを調剤室から聞くともなく聞いていた。動悸が何日も収まらなくて大きな病院にかからなくてはならないかと迷っていたら、職場の同僚がヤマト薬局に行ったら動悸が治ると教えてくれて訪ねてきたと言って…

100回

ある青年から以下のメールをもらった。僕が100回文章を書いてもこの内容より雄弁に過敏性腸症候群について語ることは出来ない。彼に快諾を頂いたのでまだ見ぬ同じトラブルで悩んでいる人達に贈る。彼の思いが届いてこの不思議な世界の常識を壊してくれる…

進路

真面目な人なんだろうなと思う。僕なら不調が改善されたら真っ先にパチンコ屋に走り、綺麗なトイレを借りる、いやいやパチンコのバネを弾くのだが、その女性は患者さんの指導により集中すると言った。 でも、同じ職業の人のお役に立ててよかった。調剤薬局で…

職人

職人だから理屈っぽいのか、理屈っぽいから職人になったのか知らないが、まさに職人気質を地で行っている人だ。 痰が沢山出て困るからと言って漢方薬を取りに来たのだが、タバコをやめたらと言う僕に、やめても痰は減らなかったとサラサラその気はないらしい…

親切

僕は親切な薬局を目指して日夜奮闘している。今日も自分でもいい仕事をしたなと自負している。 彼は、ずっと以前から義理のお兄さんがもう危ないと言っていた。哀しんでいるふうはなく、それ見たかというような言い方をしていた。健康お宅の彼にとって、無頓…

確率

99%とは絶対の一歩手前で使われる具体的な数字の割にはおよそ過ぎるずぼらさも持ち合わせている。しばしば会話に出てくるが、その数字を実際に検証したことはない。きょうその具体的で不確かな数字を僕は検証した。 久しぶりに従姉妹の子が訪ねてきてくれ…

小利口

田舎に住んでいるからひれ伏すような立派な人にはお目にかからない。そこそこ立派な人はいるけれど、足元にも及ばないと言うようなことはない。だからいたずらにコンプレックスを抱くことなく日々が穏やかに過ぎていく。ところがたまに田舎には小利口な人が…

美徳

なかなか上手いことを言うものだ。正式な呼び方か、誰かが考えたユーモアか知らないが、感心しきりだ。 正体が見えないからステルス。結局は販売目的だからマーケティング。合わせてステルスマーケティングと言うらしい。最近のステルスマーケティングの横綱…

居心地

もうこうして書くことさえ空しさを感じてしまうが、僕の薬を飲んで頂いている人にあくまでどんな人間が作っているのか知っていて欲しいからやはり書かなければならない。たわいない日常の連続にこそ本当の人生は刻まれるのだから。 僕が今時々ながら教会に足…

舞台

一度僕の薬局に来てみたかったと言ってくれた若いお母さんは、もう5年くらいはやって来てくれていると思う。家族の耳鼻科関係の病気で、抗生物質ばかり飲まされることに抵抗をもって、漢方薬というものに興味を持っていたが、相性が合う漢方薬局がなかった…

ツバメ返し

今日ユニークな話を聞いた。 家族が牛窓に引っ越してきて、その手伝いのために滞在している人らしい。田舎住まいを望んで牛窓に来てくれたらしいが、牛窓の評価をツバメを通してしてくれたのだ。その方によれば「こんなにツバメの巣が家々にあって沢山飛び回…

途中下車

地味に凄い。表に出ないヒーロー。 漢方薬でお世話を数年間している方のお父さんの話。公務員を定年退職してすぐに発ガンして、手術した後からお世話しているのだから、その方もすでに60の半ばに達している。お父さんはこのことから想像がつくが今年で97…

表情

恐らくその一瞬、不安と恐怖が頭をよぎったのだろう。明らかに顔が曇った。 それにしても僕の知り合いは幸運だと思った。こんなに有能で頑張りやさんを実務のトップに迎えることが出来たのだから。経営以外何の能力があるのだろうと思う人が、介護の分野に打…

理由

同じように勉強してきても、その知識を生かすチャンスに余り巡り会えなかったのかもしれない。勉強会を脱退する理由が経済だったら気の毒だ。 漢方薬が好きで始めたのか、必要に迫られて始めたのか分からないが、何年も時間と労力を費やしても、生活を支える…

免疫

どうも解せない。いくら現代の老人が元気と言っても、77歳で花粉症を発症するなんて。免疫が落ちてくるから本来なら、花粉症から卒業している年代だ。それが卒業どころか入学するなんてことがあるのだろうか。 めまいの漢方薬をもう数年飲んでくれている人…

儀式

数年間、毎週1回繰り返していたことでも、1年も間が空くと儀式の作法を結構忘れていた。今、昨日のことを思い出しながら文章に起こそうとしているが、今でも笑いがこぼれてくる。昨日からもう何回思い出し笑いをしただろう。 昨日はイースターと言ってキリ…

パーティーにて

森永と一言口から出たから僕にはすぐに分かった。年齢を尋ねるとまさしくそうだった。そのせいで背負ったハンディーについてよく理解していた。その程度の障害で良かったなってのが正直なところだった。しかし、それさえなければもっと能力も高く、今僕の前…

最寄り

今年に入ってから時々訪ねてきてくれる青年がいる。風邪薬を数回取りに来てくれたと思うのだが、こちらが何も尋ねないのに彼が僕の薬局に来るようになった理由を教えてくれた。2つ彼にはこだわりがあり、風邪くらいなことで医者に抗生物質を出されるのがい…

反省

ああ、なんていいお嫁さんをもらっているのだろうと思った。 息子かわいさ、孫かわいさからお嫁さんの相談に来られたのだが、僕はそのお嫁さんに会って、家族の心配が家族だからこその気の回しすぎだと言うことに気がついた。何も心配することはなく、本来持…

耳栓

コカコーラの鮮やかな赤い缶が2つ机の上に置いてあった。こういった状況の判断はいつも決まっていて「誰かの差し入れ」なのだ。僕のものではなくても差し入れだからつい手を出す。いつものように飲んでやろうと手に取ると冷たくもなく重たくもない。何とな…

名お母さん

今まで700人以上過敏性腸症候群の方に漢方薬を飲んでもらっているが、その中に何人かの「名お母さん」がおられて、僕自身が助けられた。家庭の理解があれば数段治療は簡単になり、一緒に完治を喜べる確率は高い。そんな中のお一人から今日届いたメールが…

突風

多くの地域の人が今日の突風には驚いたのではないか。突如なま暖かい風が吹き出したと思ったら、台風を思わせる、いやそれ以上だったかもしれないが、強い風が物を飛ばし始めた。慌てて裏に出てみると倉庫の上においていた煉瓦までが吹き飛ばされて落ちてき…

花束

このタイミングでこんな立派な花束を持って入ってきたら誰だって改装祝いかと思うだろう。結構繊細な女性なのだと一瞬感心したのだが、一瞬の誤解でよかった。 もらった方の一番の関心事は「この花束いくらくらいするのだろう」だから、あげる方のモチベーシ…

広報誌

あるジャーナリストが日本の新聞は「広報誌」だと言っていた。お上の言うことを検証するわけでもなく、ただ垂れ流すだけだからだそうだ。外国の新聞記事は文章の書き手の個人名が出るらしいが、日本では会社の意向に背くことが出来ないらしく、正義より、真…