2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

出会い

当時、この年齢で得た知識や経験や理性があればどれだけ楽で実り豊かな日々だろうと思うが、そのどれもがなくて怠惰に当てもなく彷徨うのが青春そのものなのだろうとも思う。持っているのは若者特有の生命力だけでそれ以外は何も持ってはいなかった。今日を…

短絡

クラシックファンの方には失礼だが、僕が第九の中で聴きたいのは例の合唱の部分だけで、あるいはあれと同じ旋律の箇所だけで、それ以外はどうでもいいのだ。素人の考えそうなことだが、CDを聴くときも、会場で生で聴くときも、早くあの旋律が流れないかな…

寒波

恐らく野球部の部費を稼ぐために全員でアルバイトに行ったのだと思う。夜を徹してベルトコンベアで流れてくるアイスクリームをただひたすら箱詰めする作業だった。最初は一つずつつまんで箱に詰めていたが、そのうちすべての指間にアイスクリームを挟めるよ…

湯たんぽ

ささやかでいいではないか。これ見よがしの連続にはもううんざりして食傷気味だ。善意も視線を集めるためなら汚れてしまう。善意など隠してしまって不器用でいいではないか。謙遜もこれ見よがしなら慇懃だ。頭より先に生理が拒絶してしまう。凡人に出来るこ…

朝早くゴミを出していたら、近所の奥さんが「今日も寒いですね」と言うから「そうですね、でも今日は風がないからまだ楽ですね」と僕は答えた。氷点下の冷え込みだったらしいが、風に頬を切られなければまだしのぎやすい。そう言えばつい数ヶ月前には「今日…

歌声

新しい歌を覚えたかったので、ある若いフィリピン女性にテープレコーダーに吹き込んでもらった。コードだけは分かっていたので、拙いギターでボロロン、ボロロンと伴奏をしたのだが、後で聴いてみて彼女の歌声の美しさに圧倒された。いつもはフィリピンの人…

クリスマスプレゼント

今日、僕は最高に嬉しいクリスマスプレゼントをもらった。毎年形だけでも何かはもらっているのだろうが、今までで一番素晴らしいものだった。過去何をもらったか覚えているものは何一つないくらいだから、そもそも比較するのも意味がないかという気もする。 …

帰路にて

知らないうちに あなたは消えていた 誰もが気がついているのに 誰もが口には出せなかった 柔らかくて 温かい手で 深く頭を垂れる姿は 本当の祈りを教えてくれた あなたは何を祈っていたのですか 神様が見えたのですか あなたに見えなければ 僕らに見えるはず…

歯車

運送業者の青年が偶然僕の薬局に荷物を運んできた。本来はデスクワークの人らしいが、休日でピンチヒッターだったのだろうか。荷物を置くなり話は変わりますがと、おもむろに自分の不調を訴えた。10年来、お腹の張りと、胸のつかえ、息苦しさで苦しんでい…

礼拝堂

なにも守るものをもっていなかった頃、なにも恐くなかった ただ守りたいものをもったとき そして守りきることが出来ないことを知ったとき 僕は一度に臆病になった 震える心を何かにすがりたいと思ったとき僕はひざまづいていた 夕暮れ時の礼拝堂には 誰もい…

絵本

「これで蝶々が出たら花札じゃなぁ」と妻が言ったから一瞬びっくりしたが、そう言えば若い頃花札で遊んだことがあるような気がする。別に裏街道を歩いていたわけではないが、当時は普通の青年がしていたのかなあと、おぼろげな記憶を辿ってみる。それにして…

質問

「こんばんは、いつもありがとうございます。症状は自分でも驚くほど良くなったと思います。主人ともこんなに早く効き目が出るんだねと話しています。ですが、生理前から、また元のような状態になってしまい、ちょっと落ち込みました。完治といっても、皆さ…

肉体労働

明らかに人選ミスなのだが、言われてみればその集団で若い男性と言うことになると、僕が当てはまってしまうのだ。社会の構図から言うとすこぶるいびつだが、恐らく色々な集団で同じようなことは確実に進行しているのだろう。世代が上の人達にとっては年齢を…

ハーフ

勘が当たってしまったものだから、話が長くなってしまった。僕はその手の情報は全く持っていないから、新しい服を着ているのを見て「それ、ユニクロの?」って聞いただけなのだ。唯一知っている服のメーカーだからそれ以外には口から出ようもない。その店で…

秀作

県境から3人づれで来てくれる女性達は、そのうちの2人が漢方薬を1ヶ月分づつ持って帰るから、最低1時間は薬局で待ってくれる。その間楽しそうに話している。薬局の次はランチをするらしくて、それがお決まりのコースなのだ。3人の話の中には、かなりの…

「なんじゃそりゃあ」と思わず声をあげたくなるような言葉を今朝のニュースで聞いた。マイコプラズマ肺炎がはやっているという特集で、保育園を取材していたのだが、保育士が「園児様の体調を考えて・・・・」と発言した。園児様っていったい何なのだろう。…

息子

「誰もお客さんがいないのだったら、息子を連れてくれば良かった」残念そうな顔で言うから、一瞬僕は対応に困った。確か彼女は独身だし、まして半年くらい前にもおなかがおおきいようには見えなかった。「私も同じのにしたんですよ」と言う言葉で息子の意味…

収納

朝早くから引っ越しの手伝いに行ったはずなのに、引っ越しのトラックが日が暮れてから我が家にやってきた。あっという間にプロの手で狭い駐車場が一杯になる。息子が捨てたものを、妻がもらってきたらしい。 これで何十年妻が待ちに待ったソファーのある生活…

クリスマスプレゼント

田舎にいるからジングルベルも聞こえてこない。不景気だから日本中そうなのかと思うが、テレビではやたらと煽っている。どうせネタを捜す力もないから恒例行事は有り難かろう。 ジングルベルもパーティーもプレゼントも、本来キリストが誕生したこととは何の…

つなぎ服

いつもはきちっとしたスーツ姿でやってくるのだが、昨日は車検工場の人みたいにつなぎ服でやってきた。困難さを予想していたかのようだ。恐らく機械に疎い薬局の急な要望だから一筋縄ではいかないことを想定していたのかもしれない。あるいは無秩序な配線を…

神話

正直、かなりショッキングな話だった。僕の田舎神話がもろくも崩れ去った。いくら背後に山が迫り、前に海が広がっても、最早子供の心を蝕むものを遮断することは出来ないのだろうか。精神の要塞なんて最早あり得ないのだ。 牛窓には小学校が3つある。牛窓町…

写真

現在薬局をやっている土地を、前の持ち主の店舗と共に買ったのが何時の頃だろうか。当時牛窓に色々な面白い人が流れてきていて、彼らとのたまり場にしようと、数年間、古い店舗の中を改装して遊んだ。 実はこんな事、頭の中から完全に吹っ飛んでいた。ある写…

孤独

相談相手もなく、一人で何とかなる時代ではない。パソコンを開けば情報には容易に接することは出来るが、それを読みとる知識や経験は、生身の人間の助けなくしては頼りない。 病気は孤独なものだ。例え沢山の人に囲まれていても、痛みも痒みも息苦しさも不自…

自戒

ここ数日でいったい、何人の方を喜ばせたのだろう。 僕が一言でも発すると「あれ、風邪ひいてるの?」と、まるで条件反射のように返ってくる。その数は優に数十人に達すると思う。又かというのが最後の頃の感想だったから。そしてその言葉に必ず嬉しそうな顔…

感想

先日、玉野カトリック教会で歌った「米原」について、以下のような感想をもらった。 「米原」が歌語になりうることを初めて知りました。地理的にも日本列島の真ん中あたり、 冬には伊吹山から吹いてくる風と、しばしば雪で新幹線は遅れたり止まったりする駅…

戦慄

一瞬見ただけだからすべてを把握できなかったが、時々報じられていることだから、特別珍しいことではない。ただ、240錠という数字だけが頭から消えなかった。本人の口から出ているのだから嘘ではないだろうが、良くもそんなに飲めるものだと、物理的な労…

ハンディー

ハンディーはいくつもある。まず英語。フィリピンの方達の指名だから歌詞も綺麗なのだろうが、何が詠われているのか分からない。次に曲。初めて聴く曲だし、自分で感銘を受けたメロディーでないから全然頭に入らない。だからどうあがいても宙で歌えない。そ…

無料

何が不愉快かと言って最近のテレビコマーシャルのこの2点は突出している。 一つは、無料とうたった携帯電話によるゲーム。どうして会社は利益を出すのだろうと不思議だったが、通話料で稼げたりゲームがエキサイトしてくると得点をお金で買う仕組みらしい。…

笑えない話

食べるものは質はどうでも量さえ満たされていれば良かったのだが、最近はその量さえどうでも良くなったから、それこそ時間が来たから食べる、出されたから食べるくらいなものでほとんど感動はない。考えてみれば食い気なんかいつの間にかなくなっていた。沢…

ロト7

お子さんの体調が改善しているのを時々父親が気づいてくれることがある。お子さんと言っても成人しているから、本来は疎遠でもおかしくないのだが、その本来を簡単に否定してしまうお家がある。僕にとっては、いや当人にとってもモチベーションが上がるだろ…