2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

操縦

田舎の人の親切を実感してくれただろうか。東京から来てくれた女性が娘と一緒に船に乗った。すると船長さんが一瞬だけ船を操縦させてくれたそうだ。1秒だったのか2秒だったのか知らないが、滅多に出来る経験ではない。少し話も出来たみたいで親切さに驚い…

空腹

今日ある方に、薬局で使えなくなった大きな道具や什器を持って帰ってもらった。軽四トラックにやっと載った。おかげで薬局が少しだけ広くなった。薬局の中はさすがにがらんどうというわけにはいかないが、出来れば住居は何もない簡素な空間にしておきたい。…

景品

滋賀県ナンバーから降り立った女性が、ルルを買いに入ってきた。田舎の薬局が珍しいのか、視線を四方に走らせていた。見つけたのが、かごに盛られているパンの袋だ。美味しそうなパンを4個ずつ袋に入れてかごの中に数個並べていた。その回りにはアザレアの…

眼差し

「私は青春を無駄にしています」と自嘲気味に言うが、肯定も否定も出来ずに僕は次の言葉を待った。能力を評価されず、また発揮できずに日々を単純な労働の繰り返しで過ごす彼女に僕はかける言葉がない。欲しなくても誰かがしなければならないことを、この国…

自然体

これで大人なのだから、今の若者は・・・何て誰にも言う権利はないような気がする。そんな思いを買い物をするたびにさせられる。僕が買い物をするとしたら、スーパーかホームセンターぐらいだから、あくまでその種の業態内での話になるのだが。それらの店は…

収支

戦いで負傷した兵士が、のどが渇いて苦しんでいた。激戦の中で水は手に入らなかった。従軍神父の水筒の中に少しだけ水が残っていた。それを負傷した兵士に飲ませようと与えたが、兵士は他の兵士の視線が気になり飲めなかった。その様子を見ていた指揮官が水…

突風

一瞬にして外の景色が暗くなると、雪が水平方向に飛ぶ。どこから運ばれてきたのか段ボール箱が大きな音を立ててアスファルトの上を回転している。さっきまで春の訪れを感じさせる陽が照っていたのに、一気に真冬の中にいることを知る。飛んできたもの、飛ん…

ボロ服

気がついたら目の前にビルのような鉄のかたまりが迫ってきたら怖いだろうな。だんだんと氷河のような鉄のかたまりが迫ってきたら恐ろしいだろうな。痛かったのだろうか、窒息して苦しかったのだろうか。冬の夜の海、自分の下は1000メートルあるのかな。…

漢方薬

出来たお嫁さんなのだろう。義父が毎晩痛い痛いとつらがって、鬱になっているから何とかならないでしょうかと相談に来た。1年半前トラクターで事故を起こし2ヶ月入院した後、夜になると痛がるのだそうだ。退院後、鎮痛薬やリハビリの治療を受けていたが、…

自然

実はその時薬局にいた大人3人、子供2人のうち大人2人が過敏性腸症候群、子供1人が過敏性腸症候群だったのだ。別にそのトラブルの集いでも何でもないのだが、偶然そうなった。僕は全員の症状を職業柄知っているから、正確に把握できる。その時5人は薬を…

痛快

親しくしている患者さんのお嬢さんが県立高校を志望していた。実力よりかなり高いところを希望していたが、岡山県特有の自己推薦入学というのも受けてみることにした。自己推薦入学は非常に競争倍率が高く2割くらいの人しか合格しないらしい。本試験の方が…

飛行機でやってきた貴女に

氷点下がいくら水瓶のメダカを窒息させようとしても、氷の下は凍ってはいない そこには生きるための空間が何らいつもと変わりなく確保されているのだ 君は雪と共に山の上から氷点下の街に降ってきた 足跡は記憶の中でたれ込めて、吐く息に水鳥達も息をひそめ…

飛行場

同じ県内、それも車で1時間半くらいで来れたところなのに、この寒さはどうだ。1週間前に降った雪が、空港の建物の陰にまだ残っている。山を削って出来た飛行場だから高いところに位置していて、道中で一度耳が詰まって空気を抜いた。今まで多くの方が訪ね…

家族

もう夜は明けていたのだと思う。インターホンの音で目覚めた。応対に出た妻が二階に上がってきて、インターホンの主が必要としている薬の名前を書いたノートを見せてくれた。旅行中の方で、至急薬が必要だったみたいだ。あいにく病院用の薬で僕の所にはなか…

劣化

岡山に帰るお金だけは残しておかなければならなかったので、国家試験まで残り数日はほとんど食事代がなかった。先輩は勿論、同級生も前年に卒業しているので、お金を借りる人間がいなくて、インスタントコーヒーばかり飲んで空腹を満たしていた。お腹がすい…

別人

・・・この前授業で津和野まで行きました。汽車の中で、みんなの中に1時間くらい座っていましたが、お腹のことはほとんど気になりませんでした。去年だったら、まず1番離れたところに座っていただろうと思います。それよりも、お腹のことを心配して、行かな…

四角四面

心臓の手術をした人が、術後飲む薬にワーファリンと言うのがある。血栓を作りにくくする薬で必需品だ。ただ、ワーファリンは飲みあわせが非常に煩雑で、多くの薬や食べ物が飲み合わせ不可になっている。納豆やクロレラも良くない。勿論お酒も良くない。 もう…

幻想

今まで得た経験や知恵を生かして、もし人生をやり直すチャンスがあっても、所詮同じ程度のことしかできないと思う。倍も有意義な人生など送れないだろう。下手をしたら、今の人生より低空を彷徨うかもしれない。経験が勇気を与えてくれるとは限らない。ため…

自転車

目が覚める前からその日の天候が想像がつくような朝だった。案の定いやいや離れた寝床からリビングに行くまでに、足の裏は床の冷たさを嫌いつま先立っていた。カーテンを開けると大きな牡丹雪が降っていた。空気の抵抗に遭い勢いはないが、視界を覆うくらい…

品位

たしか彼は、僕より1級上の人だ。髪がぼさぼさで、衣服が臭い、あごと耳の下に大きな湿布を貼っているからちょっとわかりにくかったが、嘗ての面影はある。一風変わった人ではあったが、特別礼儀正しさには定評があった。頬の左半分と首がひどく腫れて左右…

薬局の入り口に大柄な女性が立った。面影は充分残っていたからすぐに思い出した。20年くらい会っていなかった女性だ。息子のピアノを少しの間教えてもらった女性だが、ピアノ教師と言うより、音楽遊び人と言った方が寧ろ当を得ているだろう。当時、薬局の…

感動

偶然薬局に買い物に来て知り合った東南アジアの女性が、昨日日本語検定試験の1級に合格した。これで今年知り合った人全員が一応合格した。専門学校、大学、高校、検定試験と様々だが、努力が報われる瞬間を目撃できるのは幸運だ。そんな感動とは久しく離れ…

空中ブランコ

市の国保委員会というのに出席した。数字の行列になかなか素人はついていけない。職員が説明してくれるが僕の頭はブロッキング状態だ。経理に全く疎い僕は委員と言う肩書きを返上したいくらいだ。出来れば委嘱してくるときに数字に強いかどうかくらいは確か…

ちりめんじゃこ

僕が薬を作ってお世話をしているのに色々教えられることは多い。 腰と首にヘルニアを持っている女性を1年くらいお世話している。旅行に行けるほど調子が良くなったので、やっと皮膚病の薬も一緒に飲めると本人が強く希望するので、掌蹠膿疱症の治療も同時進…

倉庫

まだ物不足の時代に育った僕にとって、どうにも合点がいかない。この半年で5つものパソコンを買うはめになったことだ。そのうち3台は必要な機能が使えなくなったり、壊れそうになったから買い換えたのだが、甚だしいのはまだローンが数ヶ月残っている。お…

墓石

雪の中、朝早くから出かけ、冷たいところで用事を済ませたので、お昼過ぎには倦怠感と寒気で午後の勉強会が不安だった。あいにく車の中には薬を何も積んでいなかったので、薬局を探して、とりあえず症状を抑えておこうと思った。個人の薬局はどこも開いてい…

特権

僕がお世話をしている漢方の勉強会は、岡山でやっているからその点は恵まれている。会のための多少の事務的な手続きや会計は、勉強のために他府県まで出かけていくことを思えば負担は少ない。世話をする人間の特権を利用させてもらっている。 他府県から来る…

パン屋さん

こんな田舎の町に帰って、親の跡を何となく継いだ僕からしたら、よりによってと言いたくなるが、パン好きの僕にとってはありがたい話でもある。30年前、僕が牛窓に帰った頃には人口は12000人だった。今は8000人に減った。当時から時代に先行して…

勾配

薬局に入って来るなりソファーに腰掛けた。偶然テーブルの上に置いているヤマト薬局のチラシを見つけ「ひとりで苦しまないで」と小さな声で読んでいた。僕のチラシのタイトルはもう20年以上「ひとりで苦しまないで・・・漢方薬でお手伝い」だ。僕にどの程…