眼差し

「私は青春を無駄にしています」と自嘲気味に言うが、肯定も否定も出来ずに僕は次の言葉を待った。能力を評価されず、また発揮できずに日々を単純な労働の繰り返しで過ごす彼女に僕はかける言葉がない。欲しなくても誰かがしなければならないことを、この国の人でないと言う理由のみで押しつける。この国の人達が音を上げて避けることでも、彼女に断る権利はない。豊かさとは、お金で時間や荷役からの解放を買うことなのか。貧しさとはあてがわれたことを拒絶できないことなのか。  残念ながら、僕はこの国の人間なのだ。お金で多くのものを買い多くのものから免れている人間なのだ。何をどの様にすれば免罪符が与えられるのか、時々見せるうつろな眼差しから逃れるために考えている。決して責められはしないが、それだからこそ逃れたくなるような鋭利な真実が垣間見える。  微笑むこと、白い歯を見せて笑うこと、お茶を勧めること、いくつもの言葉を並べること、手を振って別れること、又おいでと叫ぶこと。それ以上、何が僕に出来るというのだろう。