2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ガス漏れ

今、2階で、関西から来た女の子が、お笑い番組を見ている。2階に上がって、皆で一緒に見ようと誘われたのだが、僕は薬局の事務所で処方箋の請求事務を始めた。月末の一番面白くない作業だ。 彼女はゆっくりとした関西弁を話す。テレビから聞こえる機関銃のよ…

どうでもエーデ海

昨日、偶然目にした雑誌に、日本海側のある海を「日本のエーゲ海」と紹介していた。どこかで聞いたことのあるキャッチコピーだと思ったら、僕の住む牛窓がもう何年も前から使っているコピーだ。温暖を売り物にする牛窓の海でも、「エーゲ海」とは程遠いのに…

過呼吸

夫婦どちらとも80歳を過ぎている。二人揃って薬局にゆっくりとした足取りで入ってきた。訴えを聞いてゆっくりとした足取りの意味がわかった。奥さんが骨粗鬆症で病院にかかったけれど、紹介された病院が遠くて行けないそうだ。一度検査に行ったけれど、帰っ…

中庸

5月が目の前に見えているのに、この寒さは何だろう。漁師が、海水温が上がらないと言っていた。海水温が上がらないと、魚は岩場にじっとしたままで、獲れないのだろう。温暖化が言われるばかりで、あまり寒さについては懸念されない。暖かすぎることと寒す…

バレーボール

およそ、身体によい運動は単純で面白くない。逆に楽しいスポーツは、ほとんどが身体には悪い。 飽き性の僕が、仕事以外に続けられているのは、唯一バレーボールだけだ。もう28年続けている。毎週、日曜日の夜、2時間ゲームを楽しむ。多くの人が入ってきて…

スーパーマンシンドローム

1年に1度くらいしかこの10年の間に息子とは会っていない。忙しそうだからなるべく邪魔をしないようにしてきた。昨日あることで息子と電話で話をした。電話をすることさえ、実は遠慮している。日曜日の昨日もやはり1日中働いていたらしい。受け持ってい…

泥に咲くレンゲ

何の為に、何の為にと人生は繰り返す。目標を持って日々努力せよと言われるが、その目標がいたって怪しい。勉強を頑張って目標の中学、高校、大学に入り、社会人になってからは、懸命に働いてお金を貯め、車を買い、家を建てる。たまに旅行で羽をのばし、お…

チャングムの誓い

仕事が一段落した今、ふと今夜のテレビ番組のことを思い出した。「チャングムの誓い」と言う韓国の連続ドラマだ。偶然かもしれないけれど、「冬のソナタ」「オールインワン」と、偶然点けたテレビからのめりこんでしまった。連続ドラマの、どのあたりから番…

ミミズの足

ふくらはぎや大腿部の血管が紫色に怒張して、まるでミミズがいっぱい這っているような初老の女性(下肢静脈瘤)を半年くらいお世話している。真面目に煎じ薬と天然薬を飲んでくれたお蔭で怒張はかなりなくなり、痛くてふくらはぎの一部が茶色に変色して盛り…

シール

関西に住む過敏性腸症候群の彼女は、最初の相談の時は泣き続けだった。漢方薬を2週間分ずつ送り、その都度彼女の疑問を解いていった。思い込みの激しい彼女だったが、長年の疑問を1つづつ解いていくたびに少しずつ、自分を解放してくれた。中年に達するま…

待機

大江健三郎さんの息子さんは少し歩くのが苦手だそうな。お父さんは、彼とウォーキングをして、歩き方を克服しようとした。息子さんが苦手なことは、他人に触れられることと犬に吼えられることらしい。 ある時、ウォーキングの途中息子さんが転んだらしい。大…

界隈

わずか1年前には、意気揚揚(?)と都会にすむ息子のところに引き取られていったのに、今日見た姿は豹変していた。送りだした娘も、まるで手柄のように都会の高層住宅に順応した母親のことを喧伝していたが、連れ立って入ってきた姿には、その面影はない。…

何万種類の涙

いつものように、1週間の体調を尋ねている時に、彼女は急に泣き出した。抑えきれない感情が堰を切って溢れ出た。職業柄気丈な彼女が、弱みを見せることはない。ただ仕事がハードな為に、40を回るかどうかの割には不調が多い。そもそも薬局に来て下さった…

二重のおばあさん

一見して二重のおばあさん、いやいや、スーパーの制服を着てモップで床を拭いているから、見かけほどは歳を取っていないのかもしれない。日曜日の午後、多くの買い物客は、物と引き換えに、ストレスをおいていく。自分の子や孫と同年代の者達が落としたスト…

カリスマ薬剤師

丁度去年の今頃、薬局の裏の事務室で、瞬間の激痛とともに崩れ落ちた。思わず出た悲鳴とともに瞬時のうちにその場に倒れた。恐らくぎっくり腰だと思うが、ぎっくり腰常連の僕にも経験がないほど痛みが激しく12時間くらいその場に横たわっていた。ほんの少…

幸運と不幸の谷間

僕の机の上には、まだ読まれていない情報誌が常に積まれている。資料は、製薬会社から毎日絶えることなく届く。田舎で薬局をしているから、情報コンプレックスが強く、送られてくる情報の全てに目を通さなければ気がすまない。牛窓に帰ってきてからの悲しい…

気の巡り

九州から牛窓に20数年前に嫁いだ女性がいて、何かにつけて僕を頼ってきて下さる。つい10日前も、里のお母さんが転んで内出血を起こしているからと言われて、漢方薬を送った。今朝、その女性がやってきて、お父さんの癌が悪化して、痛みで苦しんでいるから…

ためらい

僕はまだ死後の世界を想像できないから、究極の不安から解放されないでいる。もし、その先に天国が確実に待っていてくれるなら、きゅうきゅうとして今を生きる必要はないのだが、確信を持てない分、いつまでも謙虚でおられる。究極の答えを与えないのは、人…

後ろ向き

今年初めて、天気予報で大雨とか強風とかの言葉を聞いた。季節は肌に当る風のぬくもりより先行して、キャスターの口から僕に届けられる。 大きな雨粒が傾斜を保って降り続いているので、訪ねてきて下さる方は少ない。80にもうすぐ手が届きそうなあるお百姓…

フィリピンの若者達

「彼女は、今病気で、仕事も出来ないでいます。彼女の為に祈って下さい」と神父様が言われた。確かに彼女は一人、教会のお御堂のそばにある畳の部屋からミサに預かっていた。大きなマスクをしていた。フィリピンから出稼ぎに来ている彼女にとっては、仕事を…

70分の電話

昨夜、関西に住むある女性と70分電話をした。過敏性腸症候群のガス漏れで数年間苦しんでいる若い女性だ。この春、同じ悩みを抱えている人達が何人か新しい環境へ飛び出すのを手伝えてから、なるべく患者さんと肉声で接触するようにしている。ガス型の人は…

うどん屋のおかみ

ある日、食堂に二人の子供がうどんを食べに来た。お姉ちゃんは、うどんを1つ注文して幼い弟に食べさせはじめた。厨房から見ていたうどん屋の女将は、姉弟のところに行って「あら、○○ちゃん、久しぶりね。大きくなったわね、おばさん分かる?」と尋ねた。姉…

ど根性大根

ど根性大根ならぬ、ど根性パンジーが薬局の前のコンクリートの割れ目から茎を伸ばし、可憐な花を咲かせている。このところの気温の上昇を受けて一気に背丈を伸ばし、20個くらいの花を咲かせている。 皆さんももうすでに目を通していただいているかもしれな…

ツバメ

ツバメが薬局の軒先にやってきた日に、東海地方からある女の子がやってきた。過敏性腸症候群のガス漏れで悩んでいる子だ。口数が少ないけれど、僕はその笑った横顔を宝物のように感じていた。華やかで雄弁が闊歩して、もてはやされる時代に、ゆっくりとした…

ついにダウン

このところ、自分でも不思議なくらい元気だと思っていた。毎晩12時を過ぎて眠り、6時過ぎには起きていた。昨日の日曜日もいつものように爽快に起きたのだが、岡山駅に娘を送っていった後からとたんに寒気と頭痛と倦怠感が襲ってきた。まるでインフルエンザ…