2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古都

今日の午後、突然尋ねてくれた若い女性がいる。僕は毎晩、彼女とメールをやり取りしているので、僕の中で彼女のイメージはかなりできあがっていた。ところが名前を名乗ってくれた一瞬に、築き上げたイメージを爆破されたような感じだった。僕がいただくメー…

痛み

ご本人が耳が遠いと言うので、ご主人が付き添ってきてくれた。80歳前の夫婦だった。田舎は交通量が少ない為に、高齢になっても軽トラックを足替わりに良く使う。都会では危なくて運転できないだろうが、田んぼ道や裏道を走ればそんなに危険ではないのだろ…

テイクファイブ

3人の女性について。 一人は今朝、過敏性腸症候群が完治した。本当にありがとうと、メールをくれた。カルテを見ると15年の2月から、漢方薬を飲んでくれている。毎日欠かさず飲んだのではなく、途中からは2週間分を3か月で飲むとか次第に薬と縁が切れた…

職人

バレーで首と腰を痛めているせいで、毎日朝と夜のシャッターのポール立て、ポールはずしが結構応え出した。何故か知らないが、我が家のポールは従来のより倍くらい重たい。設計士さんが来られたついでに修繕を頼んでいたら、今日シャッター屋さんが来てくれ…

無縁

夕方帰っていった母が、又やってきた。2kmの距離を歩いてやってきた。近所の方に朝、頼まれていた薬を忘れたから取りに来たらしい。妻に車で送らせるから待っていてと言って2階に上がろうとする僕の腕をつかんで、「もういい、もういい」と繰り返す。8…

知性

知性とはこぼれるものなのだ。自慢げに見せびらかすのは知性ではない。僕には彼女からこぼれている知性がずっと見えていた。例えば現代人が、縄文時代や室町、江戸時代の人間より優秀である根拠など全くない。当時の状況を切り開いた人達と現代を切り開こう…

午前中、フィリピンから働きに来ている人達と会った。なにか困っていることはないかと尋ねたが、尋ねる僕のほうが余程深刻な表情をしているだろう。尋ねるのもはばかられるが、その係りになったので仕方ない。彼らの笑顔や優しげな眼差しにはかなわない。希…

美学

持っていたノートには、難しい漢字が書かれ、その後に説明が書いてあった。日本人でも余り国語が苦手な人だったら読めないのではないかと言うような漢字が並んでいた。思わず僕は驚きの声をあげた。そして何度かその声を繰り返した。それはそうだろう、来日…

T薬剤師

12年間、僕を支えてくれたT薬剤師が家庭の事情で辞めることになった。田舎の小さな町の中でのんびりと仕事をしていた僕を近隣の市町村にまで名前を広めてくれたのは、彼女が作って町外にまいてくれたチラシだった。近隣の町から多くの難しい患者さんが来…

一口

牛窓は山と海に挟まれたような狭い港町で、農家の人は主に野菜を作っている。畑は多いが田んぼは少ない。農家の人だってこの辺りでは米を買っているのではないかと思う。 田舎の百姓や漁師に鍛えられたからかどうか分からないが、実は僕は膝の痛みとか腰痛、…

汽笛

日本人の小学生の女の子が、オルガン伴奏で行き詰まって困っていたところ、ベトナムの青年が出てきて楽譜を見ながら、両手でベースとメロディーを弾いた。さっきまでのたどたどしい伴奏が一気に軽快なリズムを刻み出した。そっと現れて、いつのまにか少女と…

当たり前

昨日閉店間際に入ってきたお母さんと1時間くらい話をした。お子さんの病気の為にいただいた薬に何か不安を感じていたみたいだった。大病院の薬だから基本的には良質のものが多くて、医師や薬剤師、それも優秀な複数のかたのチェックの元に投薬されたものだ…

運動会

中学校の運動会で、僕はクラスの男に、リレーで歩くように指示した。クラス委員をしていたし何故か不良に人気があったから、結構僕の言うことをきくクラスメートは多かった。案の定、不良を中心にピストルの合図と共に僕のクラスだけ走らずに歩き始めた。僕…

許し

人を許すことは難しい。忘れようとしても、考えないようにしても、どこからかいつでも簡単に狂気は蘇る。まるで不死鳥のように日常のありとあらゆる所を飛びまわる。見返りで許すこともあるかもしれない、暴力で反撃して許すこともあるかもしれない。でもそ…

もう、涙をこらえる必要がなくなった。泣くのが恥だとは思わないから、泣くのを我慢するだけの目的で懸命に対象にのめりこまないように意識を散らす努力も必要になくなった。そもそも若い時は、哀しみは自分だけのものであり、他者に対する感情で涙を誘われ…

免許証

昨日、僕はある青年から「本当に、本当にありがとうございました」と言うメールをもらった。ありがとうの前に、1回本当にをつけてくれるだけで十分意は伝わってくるのだが、2回も繰り返されればもったいない気がする。僕がしたことなど本当にを1回でもつ…

Yへの手紙

Yへの手紙 最近、僕は「もこみち」と言うより、「ソ・ドヨン」に似ているなと自分では思っています。ただ人は「高見盛」に似ていると誉めてくれますが。お茶漬けの宣伝にでも出ようかな。 さて、貴女は、ご自分の症状を冷静に分析出来るようになっています…

田植え

昨日、ある皮膚病の漢方薬を飲んでいただいている方が、帰りしなに「これで明日からのお田植が出来る」と言われた。2週間前、かなり痛々しい手でこられて、それが改善して痒くも痛くもなくなったから喜んでくれたのだ。ぼくはその「お田植」と言う言葉がと…

スコップ

都市部に住んでいる人にはピンと来ないかもしれないが、田舎では狸がやたら増えている。増えていると言うより人間の世界に近づいてきたのかもしれない。本来の生息地が開発によって壊され住むところを失ったのかもしれない。彼らにとっては人間は巨大な動物…

風景

昨日、児島湾大橋を渡っているとき、いつもと違った何かを感じた。結構高い橋の割には欄干が低いので、緊張して車を走らせるのだが、何か視界の中に違和感があった。それを確かめなければならないような気になって、僕は視界を正面から一瞬眼下の海面に映し…

サーバーの故障

昨夜、自分が書いた詩を読み返したくてブログを開いてみたらなんと、サ-バーのエラーで見れなかった。朝にもう一度開いてみたが、やはり英語でエラーと出ていた。朝の7時になって、薬剤師の家に電話をかけ尋ねてみると、ひょっとしたら数日前から見れなく…

この心 どこかに捨ててしまいたい 遠くオホーツクの海でもいいし サンバで踊り明かす ブラジルの貧民屈の 銃口の中でもいい 軽くなって 清くなって 白熊と戯れて 流氷を赤く染めてみたい この心 どこかに捨ててしまいたい 大切にしまっておくほどの重量もな…

堤防

テレビの天気予報を見ていたら、全国的に大気が不安定になり、雷が発生しているみたいだ。牛窓でも夜の8時頃からはじまって、今だ光っている。遅くても数時間で過ぎ去ることがわかっている雷にさえ、人はびくっと驚くのに、これが止むことのない爆弾の音だ…

選択

介護で稼いでいる最大手の会社が、裏で汚い事をしていた。よくある話だから別に驚かないが、処分を受ける前に会社をたたみ、同じ穴のムジナに譲り渡すそうだ。右手がだめなら左手を出すと言う具合いだ。両方の手は同じ人間から伸びているのに。右手から左手…

報告

もし、長い間行けなかった美容院に行けたら、もしデパートでゆっくり買い物が出来たら、もし外国に留学できたら。今日はこの「もし」がかなえられた過敏性腸症候群の人からの連絡が相次いだ。僕にとっては比較的心が穏やかに過ごせられた日だった。なにの因…

逃げ道

Jへの手紙 僕は、子供の前に絶対に立ちはだからないと言うことを守って育てました。一度もNOと言ったことがありません。かならず援助する立場にたちました。或いは勇気を出して見守る立場に立ちました。経験が彼らより多いですから口を挟むことは簡単です…

海水

ある砂浜で、小さな男の子が、穴を掘った。男の子はバケツで汲んだ海水を穴に移していた。何度も何度も往復して水を運んだ。ある人が男の子に尋ねた。「何をしているの」男の子は答えて言った。「海の水を全部この穴に移そうとしているの」 大人ならだれでも…

質問

おそらく初めてではないか、薬剤師会で漢方の講演会があったのは。ツムラと言う有名な漢方の製薬会社の学術の方と、薬剤師会の会員で漢方に詳しい方の講演だった。二人の講演の後質問の時間を取ってくれたので尋ねてみた。別に聞かなくても全て分かる程度(…

声援

ある街で、ある若い女性が先生を目指している。過敏性腸症候群でつまずいているが、今なにかが変わろうとしている。いつかきっと克服したら、とてつもない財産として、将来接するであろう生徒や同じトラブルで悩む人達の大きな励みになる。 プライバシーに配…

笑顔

ベトナムから研修と言う名で働きに来ている若い女性達が時々薬局にやって来る。ずっと以前から自転車で数人連なって走っているのを見かけていたが、ふとした買い物で寄ってから時々訪ねてくるようになった。その中に一人だけ日本語が出来る女性がいる。後の…