許し

人を許すことは難しい。忘れようとしても、考えないようにしても、どこからかいつでも簡単に狂気は蘇る。まるで不死鳥のように日常のありとあらゆる所を飛びまわる。見返りで許すこともあるかもしれない、暴力で反撃して許すこともあるかもしれない。でもそれは本当の許しではない。空しい自己満足だ。なにも求めず、むしろ許すべき相手の幸せを求めながら許す。この至難の心のあり様の為に、延々と徳を積むような生活をしなければならない。徳を積むしか許しの境地には届かない。  子供の時から数多くの許しを得た人は、人を愛することが出来る。逆に幼い時から、許された経験が少なく、罵声を浴びつづけた人は、人を愛せない。その人が悪いのではなく、その人を許さなかった親や周りの人が悪いのだ。理屈で人は育たない、育てられない。無条件の愛を一杯いただいた子供たちだけが、人を傷つけない最低限の掟を身につけられる。