2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

空腹

自分で言うのも気がひけるが、今日は本当によく働いた。僕の薬局では病院関係の調剤は全部薬剤師さんにやってもらっている。勿論僕も薬剤師なのだが、若い時に調剤した経験がないので調剤コンプレックスの塊だ。幸い病院で調剤の経験が豊富な薬剤師さんと縁…

恐れ

ある師は、ある男だけ可愛がった。側から見ていて誰の目にも明らかだった。他の弟子達は多いに不満だった。何故ならその男は決して、能力が秀でているわけでもなく、いやどちらかと言うと劣っている方だった。おまけに見かけも決して整っているとは言えなか…

ロザンの宇治原

僕は漢方講演をするときには必ず自己紹介で「ペ・ヨンジュン」ですと言う。前回の講演に来て下さったある女性が、以来僕の漢方薬を飲んで下さっている。その方が今日も薬を取りに来られて、僕のことを「ロザンの宇治原」に似ていると言われた。僕は何のこと…

ブルース

すだれの向こうから、蛍光灯の明かりと共に、生ギターのブルースが流れてきた。誰かが、窓ガラスを暑さの為に解放してブルースを弾いている。こんな田舎に珍しい音だったので、僕はしばし立ち止まって聴いていた。最近引っ越してきた家だから住人を知らない…

破天荒

今日、中古の分包器を三万円で買った。調剤薬局を閉めた方から買った。色々ないきさつがあって、医者とついに仲たがいして薬局を閉めたようだが、ごたごたで5Kgやせたといっていた。元の値段が幾らか知らないが、仲介してくれた問屋のセールスが、耳元で…

脱出

うれしいメールが今日は二人から入った。どちらもあまり家から外出できなかった人達だ。それぞれ理由は違うが、狭い生活空間から脱出してもらうことの役に立てた。1人は秋に結婚するらしい。結婚は、人生最大の後悔の始まりかもしれないし、幸運の入り口か…

機関銃

恐らくお嬢さんは僕より少し年が上。従ってお母さんもまた僕の母より少し年上だろう。指がしびれることと、腕に力が入らないことを主に訴えて1年以上前やってきた。熱心に漢方薬を飲まれ、今では指先に気がつくとしびれを感じるくらいに改善し、手を握り締…

あかんねんで

家に帰りたがるお母さんに、男性は「あかんねんで、もう生きられへんねんで」と言ったそうだ。お母さんは「そうか、あかんか、おまえと一緒やで」と応じたそうだ。記憶にまだ新しいから覚えていると思うが、今年2月1日、京都桂川の河川敷で男性はお母さん…

ワイパー

三重苦のへレンケラーは、友達が2時間森の中を散歩して帰った後、「森には何もなかった」と言う感想を聞いて驚いたそうだ。見えない聞こえない話せない彼女は、花一本一本の香りを楽しむことができたし森の息吹を感じることができた。 わずか20グラムの鳥…

熱中症

恥ずかしい話しだが、僕は母が何歳かしらない。生年月日も知らない。勿論調べれば分かるのだが、その必要がないから今だ知らない。よく働く人で、今だ働いている。昼過ぎに僕の薬局にやってきて、夕方日が暮れる前に帰っていく。来るときはバスでやってくる…

貧困

OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本はアメリカに次いで、堂々2位の相対的貧困率だ。こんなことを言うと不思議に思うかもしれないが、日本の所得格差が拡大し、可処分所得の中央値の半分以下の人達の割合が13・5%もいるらしい。見かけは今ま…

ホラ話

冷蔵庫の中に大きな西瓜が半分に切られたのを見つけて、毎晩水分補給の為に包丁で切って食べている。少し食べるだけでのどの渇きが癒される。不思議な力を持っている。 僕は9人家族で育ったので、夏のおやつは毎日西瓜1つを要した。3時になると子供はどこか…

窒息

泥が鼻の中にまで入ってきて窒息するのは苦しいだろうな。濁流に飲まれ浮きあがれずに流されるのは苦しいだろうな。同じように生まれてきて、同じように暮らしてきて、少しは社会の役に立って、少しは人を救い、少しは人を慰めたのに、なんであんなに苦しい…

ハンディー

長年太陽に当らない生活をしてきたせいか、どうも僕は骨にハンディーがあるみたいだ。去年の春は、腰が抜け一瞬のうちにその場に倒れ、秋には腕の疼きに泣かされた。昨日何気なく荷物を持ったまま、上半身だけ動かしたら背中に一瞬のうちに激痛が走った。丁…

あなたの命をいただきます

今日は祝日なので、5時に仕事を終えテレビニュースのはしごをしていた。その中で印象に深い光景があったので披露する。勿論同じ内容の物を見た方も多いと思う。 高速道で横転したトラックの中から、豚が10数匹逃げ出したらしい。その中のほとんどは後続の車…

紹介

今日、岡山の街で明かに僕に向かって微笑みながら近づいてくる男性がいた。僕は自分を指差し、「どこかでお会いしましたっけ、でも僕は覚えていないかもしれないから失礼に思わないで下さい」とすぐに先手を打った。僕は人を覚えるのがかなり苦手で、カルテ…

かんな

今、あるトラブルで電話をしまくっている。この時間帯にお世話にならなければならないのは恐縮だが、畑違いの僕には為すすべはない。餅は餅屋で、平生何気なく接している人でも、いざその人の領域に入れば大変心強い。こうして人は皆、自尊心を得て一生生き…

白衣

何故、二人ともこんなにうまく育っているのか、機会があればどこかで発表でもしたらよいのにと思うほど、善良に育っている兄弟がいる。中学生兄弟だ。今日家族で来てくれたが、お父さんの仕事の都合で4人分の漢方薬を45日分ずつ作った。煎じ薬も含んでい…

その手の人種

薬剤師は仕事中は薬局を離れたらいけないので、原則としていつでも僕は薬局にいるが、今日偶然スタッフ3人が同時に、それも別々の理由で薬局を離れなければならなかった。その間母が一人で留守番をしてくれた。その間30分だったが、僕は会議に出ていてもハラ…

ガラガラヘビ

昼過ぎから、学校保健委員会というのに出席していた。帰ってみると黒板に薬剤師さんからの伝言があった。名前を書いているだけだったので、何かの健康相談だと思っていた。と言っても昨日も一昨日も来ている人なので、新しい処方の質問くらいに思っていた。…

放浪薬剤師

別に具体的な目標があった訳ではないが、55歳まで働こうと思っていた。その後は命に未練がなくなるから、飛行機にでも乗って外国に行こうかなどと漠然と考えていた。(飛行機は落ちるものと言う考えから抜け出られない)子供を育てている間は死ねないといつ…

美しいもの

美しいもの。それは、頂きに雪が残る高山か、鳥がさえずる麓の森か。流れを急ぐ清流か。鯨が潮を吹く海洋か。無数の星が輝く天空か。 大鷲が滑空する。野生の馬が群れをなして駆ける。鹿が跳ねて熊が2本足で立つ。この世は美しいものばかり。地球は美しい星…

信号機

男の子が女の子を自転車に乗せて笑いながら横断歩道をこいでいく。子犬を連れた老婦人が背筋を伸ばして青信号をゆっくり渡る。横断歩道の上で先輩かな、あたかも「よおっ」と声をかけたような仕草の後に、相手の男が自転車にまたがったまま、何回も照れるよ…

緊張感

70歳代の男性が助手席に同じような年代の男性を乗せ、2週間前にやってきた。子供の頃からハンディーを持っている弟さんを今まで支えているらしい。勿論これは他人から聞いた話だ。本人の口から聞いた事ではない。その弟さんが今年に入ってから腰から大腿…

久しぶりに来られたその方は、いつもの杖を使っていなかったので、「杖が要らなくなったんですか、良かったですね」と僕は声をかけた。僕より数歳年下だと思うけれど、彼は杖が要らなくなったのは義足のせいだと言った。ズボンの上からはどこから切断したの…

たくましく生きる

人質にしていた冷気を開放して夜が去る 肉食のカラスが朝を告げる たくましく生きると言うことは 空を舞い 威嚇の泣き声をあげ 逃げ惑うものを蹴散らし 逃げ遅れたものを骨までしゃぶることか いつのまにか嗚咽の月が消えている 雲を焼きながら太陽が顔を出…

学校保健委員会

学校保健委員会と言うのがあって、学校医、学校歯科医、学校薬剤師が出席する。他には学校の先生方、父兄の代表だ。生徒の健康と安全を話し合う会で、全国的に存在するのかどうかは知らない。毎年のことで、マンネリ化していて、何故その場所に僕がいるのか…

完治

過敏性腸症候群は一見、若者に多いトラブルのように思うかもしれないが、意外と中年のも多く、高齢者の中にもいる。幸いなことに、その世代の方は情報を集めることが苦手だから、自分の病名さえ知らない人が多い。だからおなかが弱いとか、ガスがよく出ると…

幸せと不幸の線

幸せと不幸の線をどこでひくのか分からないけれど、多くの人がその狭間で揺れている。健康な体をもてた幸福があれば、健全な精神を持てた幸せもある。人に助けられた幸運もあれば、人を救った幸せもある。 若い母親で、雑誌の表紙に載るように華奢な人が数人…

ブロッキング

薬局の月末の仕事に、調剤報酬の請求事務というのがある。処方箋による調剤報酬を国に請求するのだ。僕の薬局はそんなに沢山の処方箋調剤をするわけでないので、数時間頑張ればなんとか終わる。まずパソコンで1ヶ月分の調剤記録を紙に印字して、そこから手…