2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

経験

他の職業でも同じかもしれないが、年齢を重ねて得なことが一つだけある。頭も体もなかなか健全ではあり得ないが、経験だけは知らない間に積んでいるのだ。その経験が意外と大きな力を持つ。 こと僕の仕事で言うと、相談者が訴える体調不良のほとんどを理解で…

そこまで

タンポポかユタンポか知らないが、これでは病院なんて、それも高度な治療をする大病院なんていらないではないか。 不妊に効くから取り引きしてくださいと飛び込みで入ってきた女性の説明によると、もらったパンフレットにも同じことが書いてあるが、タンポポ…

封印

驚きの後に又驚きだ。 100歳を越えているのに、ただ一つのことを除いて何処と言って不都合な所はない。そのただ一つのことのために相談に来てくれたのだが、それ以外は一体何歳の方と肩を並べるくらいの健康度なのだろう。見た目にも当然100歳を越えて…

価値観

原発で関東から避難、いやもう牛窓に永住すると言っているから避難ではないか、引っ越してきた若いお母さんに、家を貸してあげようと提案していたが、結局はもう少し良い空き家が見つかりそうだ。母の家は専門家に診てもらったら柱がしっかりしているから、…

昼食

手頃な食事を楽しむことの多い娘をして「気の利いた器に盛ると、即カフェをオープン出来るのではないの」と言わせた。最高の評価に本人達も喜んで「オトウサン、オネガイシマス」と、いたづらっぽい笑顔を僕に向ける。 丁度妻がいない日、家族4人分の昼食を…

止めて

あれも止めて欲しいけれどそれも止めて。 折角の便利という存在価値が見え透いた接待で台無しになる。度を超すと、無くてもいいものになってしまう。元々僕の町には数年前まではなかったのだから、無くなっても何ら不自由はない。寧ろ90を過ぎた老母に添加…

我慢

いくら牛窓の魚が美味しいからと言って、刺身を普通の醤油で食べるのは美味しさも半減だ。いや半減どころか9割減だ。だから薬局を閉めた後に刺身醤油をコンビニに買いに行った。どうしてコンビニで刺身醤油を売っているのか分からないが、我が家みたいな家…

同級生

ある年齢に達すると老け具合は上下10歳くらい違うと言われるが、まさに今日そんな見本を見た。 近所にあった薬局が廃業してから、時々見知らぬ地元の人がやってくる。とりとめのない買い物だったが、老人が使うものだった。何気なく応対して何気なく帰って…

ただ者

決して有名ではなかったのだろうが、県内では実力に於いて上位を占めていただろう漢方薬局の名前がボンボン出てきたから、ただ者ではないなと思っていたら、ただのただ者だった。僕の薬局は、ただ者でないような人が決して来る薬局ではないから安心したが、…

生き証人

駐車場の整備を頼んでいた会社の社長が帰る前に「お嬢さんいる?」と言って、わざわざ娘を呼んだ。僕は娘夫婦が主導して依頼した工事だから、その事についての話かと思っていたら、話題は全く違っていた。 調剤室に消えた僕にも次のような話し声が聞こえた。…

言葉の壁をもろともせず、持ち前の明るさでいつも回りを明るくする。貧しさのせいで両親と別れて祖母に育てられて掴んだ処世術とはとても思えない。きっと本来備わっている気性だと思う。 そんな彼女が憔悴しきった声で電話をくれた。片言の日本語で説明して…

空席

さくらと言うからには、車体に桜の絵が一杯描いてあるか、寅さんの妹が乗っているか、不人気のためJR西日本の社員が一杯乗客を装って乗り込んでいるのかと思ったら、ごく普通の見慣れた新幹線がやってきた。強いて言うなら車両の数が少なくて、以前のレー…

覚悟

その女性は帰る前に微笑んで「頑張りましょう」と言った。知らない人が聞くと何のエールかと思うが、最近同じような連帯感の表明を多く経験する。 痴呆が日々進みつつある母と同居しているお陰で、痴呆についての理解が深まり、薬局に紙おむつ等の介護用品を…

話の中に何度も「クリ」という言葉が出て来るが、どうもその意味を前後の文脈で推測できない。最初は我が家の死んだクリのことを言っているのかと思ったが違うし、僕の好きな栗のことでもなさそうだし、真面目な人だから「○○してくり」なんてギャグを飛ばし…

古着

冬に戸外に長い時間出ている可能性はほとんど無いから、とりたてて冬用の服を持っていない。外出はほとんどがドアからドアだから、重い冬服は肩が凝るだけで寧ろ避けていた。ところが正月に従姉妹の家に行ったときに従姉妹が彼女の息子の着古した服をいくつ…

のぞき見

日曜日、漢方の勉強会に急いでいた時、ある有名ラーメン店が目に入った。テレビで行列が出来る店と紹介されたチェーン店の一つらしいが、実際に行列が出来ているのを見たことはない。もっとも、僕がその店の前を通るのは必ず日曜日だし、城下から駅までの電…

沈没

どうして僕がこんなことを応対中に喋らないといけないのかと考えると空しくなってくるが、一つ一つの積み重ねで少しでも生薬の枯渇を防げるかなと、はかない夢を抱いたりする。 はたしても例の葛根湯を買いに来る。4日間飲んでいるが全然風邪が治らないと言…

親切

世の中には親切な人が多い。今日も朝から親切の洪水だ。その親切を一つずつクリックしながら消していく作業をしなくてすむ親切が現れたら世の中の多くの人がかなりの負担を軽くすることが出来ると思うのだが。 そんなに宝くじがあたるなら、人に教えず全部自…

鈍足

悲しいかな、一度にいつもの昼食の10倍くらい高価な食事を頂いてもそんなに感慨はない。余程食べ物に興味というか好奇心がないのか、次から次に出される料理を口に運んでいるだけだった。ただ同席の漢方の仲間は、先生を始め皆謙遜な方で、心の穏やかさは…

Uターン

このままでは薬局の前がUターンのメッカになりそうだ。 以前からそうだったが、土日に中学校でスポーツの試合や大会があると、体育館に沢山の車がやってくる。車が進入する入り口は薬局から見て道路の向かい側の右側にあるのだが、そこの進入路がカーブの途…

ライフワーク

この時期にしてもう今年の流行語大賞は決まった。そんな面白い言葉を今日聞いた。電話中に聞いたときはふと笑いがこぼれただけだが、受話器を置いてから思いだす度に笑いが込み上げてくる。なんて上手いことを言ったのだろうと感心した。 こうして書くと楽し…

違和感

その女性は終始表情が硬く、ついぞ笑顔を見せなかった。僕にはある意味屈辱のように見えた。 正直僕にはもう自信がない。その場で行われる多くのことが違和感を持ってしか見られないのだ。自分がひねくれ者なのではないかと思ったりするが、その場以外では全…

放送

都会の人が偶然その放送を聞いたら、戦争でも起こるのかと思ってしまうだろう。三陸の大津波で少しは知名度が上がったかもしれないが、田舎には放送施設があるところが多い。特に海岸沿いの町には必需品かもしれない。と言ってもいつもそんな物騒なことに使…

返還

「さすがに野ウサギを見るのは珍しいですね」と言う言葉自体が珍しい。この辺りだとあり得ない会話だ。ただその方の住む所は牛窓よりかなり北、それも山里?を連想するような土地だからありうるのかも知れない。 「猪と遭遇するとさすがに恐いですね。結構大…

老婆心

男でも老婆心と言うのかどうか知らないが、全くの老婆心だった。 過敏性腸症候群が完治した人で、今はほとんど必要ないのだが、恐らく高級な胃腸薬程度の積もりで半年に一度くらい漢方薬を頼んでくる人がいる。半年ぶりに電話をくれたから体調を尋ねると、1…

迷い

珍しく帰ってきたから、すぐ懸案の人の検査データを見てもらった。すると3行しかないデータなのに、少し考え込んだ。よその病院と表記方法が違うのかと思って待っていたらおもむろに「この人、だいぶ悪いよ」と言った。そして次に「この人肝臓が悪くなった…

もし

彼は浪人中に過敏性腸症候群の相談にやってきた。予備校の授業は勿論、運良く合格してから後も不安だったのだろう。漢方薬が奏功して見事大学に合格したのだが、5月の連休にはもう辞めてしまった。入学したのは第二希望だったが、辞めるほどのレベルではな…

残高

正直その態度の悪さ、いや恐らく悪意はないのだと思うが、余りにも愛想のなさに応対するのがいやになる人物だ。だけど何故かもう10年やそこらやってくる。薬局に入ってきてから出ていくまで口を利かないこともしばしばだ。ほとんど物体に向かって応対して…

3連休

思えばこの3連休中、とても良い人達に出会えた。予期せぬ人達ばかりだが考えてみればそれだけ多く外出していたことになる。そして全く仕事をしなかったことも珍しい。と言うより初めてかもしれない。記憶を辿りながら経時的に書く。3日間ともかの国の女性…

福袋

嘗ては、何度も何度も繰り返していたことだが、3年も間が空くと全てが新鮮に思えた。 僕は勉強を兼ねないと余程のことがない限り出歩かなかった。まして県外となるとほぼ100%近くその原則を守っている。だから今日のように勉強会や講演会の出席を兼ねな…