昼食

 手頃な食事を楽しむことの多い娘をして「気の利いた器に盛ると、即カフェをオープン出来るのではないの」と言わせた。最高の評価に本人達も喜んで「オトウサン、オネガイシマス」と、いたづらっぽい笑顔を僕に向ける。 丁度妻がいない日、家族4人分の昼食をかの国の二人の女性が作ってくれた。前日から分かっていたから準備万端で作ってくれたのだが、かの国仕立てのサンドウィッチとハンバーガーとスープと食後のスイーツで、昼食フルコースだった。どれも野菜がたっぷりで、とても健康的なことに驚いた。その上、僕が次第に慣らされたのか、全く味に関して違和感がないのだ。せっかくの好意もいつもありがた迷惑の域を出ないのだが、意を決して食卓に腰掛けた僕は、十分かの国の料理を堪能した。余りにも抵抗なく食べることが出来て、なおかつ余りにも美味しかったので「これは○○○○料理?それとも○○ちゃん料理?」と尋ねてみた。かの国の味付けなら今すぐにでも永住できそうだが、僕用に特別アレンジしてくれた物なら、やはり日本料理店がないと訪ねることも出来ない。すると、料理を運ぶ係りの女性が「オトウサンノタメ ツクッタ」と教えてくれた。どうりで抵抗なく食べることが出来たと思った。  スープの中には沢山の鶏肉と2種類のタケが入っていた。サンドイッチやハンバーガーの中には、3種類の野菜が入っていた。スイーツは緑豆の何かだと教えてくれた。僕が見つけることが出来ただけで6種類の野菜を食べたことになる。我が家の食事より断然種類が多い。経済的にまだまだ日本には及ばないから、如何にも粗食に甘んじているように見えるかも知れないが、結構豊かな食事をしていると思う。もっとも○○ちゃんが料理が上手すぎると言うこともあるが、店屋物をほとんど食べない彼女たちは、全て材料から調理し、経済と健康を同時に満たしている。 「オトウサン、オネガイシマス」の半分くらいは本気が入っているのだが、僕にはどうしてあげようもない。経済的に支援できるなら牛窓に○○○○を標榜する店があっても面白いのだが、残念ながら僕にはその方面の力はない。ひたすら牛窓にいる間、出来る限りの親切を尽くすしかない。 二人が少し照れながら「オカアサンイナイトキ デンワ ゴハン モッテクル」と言ってくれた。こんな親切を今の時代に体験できることをとてもあの子達に感謝している。あの子達とだけではなく、偽らない気持ちのやりとりを職場(薬局)でも私生活でも出来る幸せを思う。