2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

合唱

昼食時、NHKテレビで、中国地方中学校合唱コンクールの番組を見た。偶然回したチャンネルだが、その美しいハーモニーに瞬時に魅せられて、最後まで見てしまった。歌の素晴らしさは勿論だが、あごをひいて大きな口をあけて真剣に指揮者を見ながら情感を込…

4日坊主

およそ僕には黙々とと言う形容詞は似合わない。自分で一番の欠点は知っている。一つのことに打ちこめないので、一度に多くのものを並べ、それを細切れで片付けていく。それが僕のやり方で、結果的には、黙々とやったことと同じことは出来ると思う。 ただ、今…

検診

今日母は、町の検診だったらしい。これだけは無料だから行く。結局今日も検診の結果、なにも言われなかったらしい。ただ、目はなにか通知が来るかもしれないなと言っていた。最近結膜炎気味で、薬剤師さんに頼んで抗生物質の目薬をもらって勝手にさしている。…

飽気Ⅱ

秋は 川面を渡って 橋の向こうから 僕の襟元に そっと忍び込む 背中の下で 昨日の雨が 震えている カラスが1羽 右の目から 左の目へ 消えていく 土手の上をトラックが 我が物顔で走り去る 残された砂埃だけが その時だけの命もてあます 僕の心の中には もう…

銀幕

薬局の仕事は閉じ込められた空間だ。しかし、訪ねてきてくれる人達が色々な情報や知識を運んでくれる。五十肩で今お世話している方は、黒い高級車に乗り、眉毛がなく、そりこみが自然に入り、肩を揺らして歩くので、誰もが避けてくれそうだ。雑踏でまっすぐ…

歯車

なにの番組かしらないが、ふと沖縄の三線をひきながら3人組の男が歌っていた。なだそうそうを作ったグループだと思う。僕は沖縄特有のメロディーが好きだから、チャンネルを変えるのはそこで終わり、歌っている男達の後ろ側で、色鮮やかな民族衣装で太鼓を…

薬剤師

10月からの健康保健の一部改正(改悪)の説明会が岡山であった。会場は700人収容の施設なのだが、それでも立ち見が沢山出ていた。僕は運良くぎりぎり席を確保できたのだが、3時間近く立ったまま退屈な伝達事項を聞くのはつらい。岡山県内の調剤をして…

運転手

信号機が何回変わったのだろう。行く当てもなく、僕は車列が交互に止まり、交互に進むのを見ていた。パトカーが2台、そこのけそこのけと、けたたましくサイレンを鳴らして交差点の中を突っ切った。又誰かが誰かを傷つけた。 こんなにすがすがしい秋の夜なの…

たいしょう

ソファーにふんぞり返って、足を大きく開いて僕のことを「たいしょう、たいしょう」と呼んでも顔が笑っている。薬局ですごんでみる必要もないのだが、そうでもしなければ照れくさいのだろう。ダンプの運転手をしていたわりには、心は原付だ。50ccくらい…

必要条件

心配していた人が今日やってきた。明るい顔ではいって来たからほっとしたが、結果を聞くまでは心配だった。足の静脈瘤を漢方薬でお世話している女性が、検診で胃に穴が二つあいていると指摘された。胃酸が上がってくる自覚症状はあったらしい。これもついで…

耕耘機

母の家は、昔の町並みが残る古い住宅街だ。水害の後、薬局部分をつぶして広い空き地が出来た。駐車場に貸してくれと何人かに頼まれたが、わずらわしさで断わった。その後母が見様見真似で菜園を作り、悪戦苦闘していた。親切な人達のお蔭で、小さな収穫も味…

格子の向こうに 秋が誇らしげに立ち 飛行機雲が 格子と並行に飛ぶ 電線さえも真似て 垂直を誇示する そうか 秋は垂直にやってくるのだ 肺胞のすみまで 乾燥した想いは 潤いを知らぬ砂丘の斜面に似て 風の一吹きで消される足跡を 石膏で固めて この弱き男の行…

台風一過

今日は祝日でもあるし台風あけでもあるから、のんびりと薬局で日頃手がつかない作業の整理をしていた。この春中学を卒業したばかりの子が来て、話しているうちにパソコンが好き?、得意?だということが分かった。そこで色々教えてもらおうと思ったのだが、…

傲慢

もしかしたら、2年前の夏の夜、母を連れて高台に逃げた時から、僕は守るべき人を失ったのかもしれない。一瞬のうちに海が陸に上がってきたとき、僕は必死で老いた母を守った。勤めて冷静を装いながら、恐怖で混乱しそうだった。僕一人ならなんとでもなるこ…

自由

今夜、仕事を終えてから海岸に行って見た。海岸縁を車で徐行すると、小さな漁船が異様に大きく見える。その理由は、海が岸壁からわずか数十センチのところまで溢れているからだ。だから低いところに見ているべき漁船の姿が、ほとんど水平な位置に置かれてい…

ブログ

僕はこのブログで本当の自分を語っている。まだ見ぬ人達に、あなたの薬を作っているのは、こんな人間だと言うことを知って欲しいからなのだ。大都会で、立派な店構えをして、風格のある薬剤師が、立派な相談机の向こうで迎えるような薬局ではない。その逆を…

港のない海

港のない海は 無縁仏の風の音 行くところもなし 帰るところもなし ただただ 漂って 沈没した帆船の 錆びた歴史が 絡み付く 港のない海は 人恋しさに荒れ狂う 信じるものもなく 裏切りもなく 波間に見える 曇天は 沈没した精神を 腐乱させる 港のない海は 孤…

人格を失った時

本当は 雨だれの雫を割って 中を覗いてみたかっただけなのだ その中に ほんの少しの勇気があったなら ちょっと借りてみたかっただけなのだ もし希望などと言うものがあったなら 小躍りして 明日に賭けて見ようと 思いなおすことも出来るかなと考えたのだ 本…

OTC

娘が勤めている最大手の調剤薬局チェーンでは、今月OTC(自分で買える薬)を1店につき80万円売らなければならないそうだ。処方箋を調剤する薬局ではかなりきつい数字だと思う。薬剤師が5人いる薬局だから、処方箋を持ってくる患者さんは結構多いと思…

今目の前にいる人

所詮僕らは凡人。大きなことは出来ない。大した物は残せない。それならどうして日々を過ごせば、なんとか社会の役に立ったと、自分でも妥協出来る辺りで納得した人生といえるのか。その答えは日々の生活の中にある。「今目の前にいる人の為に全力で尽くすこ…

フィリピーノ

今、僕に一番優しい眼差しを送ってくれるのは、フィリピンの若者かもしれない。片言の英語と、片言の日本語で意志を通わせるのだが、心が十分通訳をしてくれる。僕を見つけたら遠くからやってきて握手を求める。キリスト教的に言うと同じ共同体の人間という…

くらげ

僕は全く気がつかなかった。その方の左目が全く見えないなんて。80歳をどのくらい過ぎているのだろう。腰が二重になってそれでも足りないくらいでもなお働いているその人の左目が、見えないなんて想像もできなかった。そんなことを感じさせる空きもないく…

カマキリ

80歳を前にして、嫁さんに死なれた男は頼りない。食事は作れない、洗濯は出来ない、掃除はしない、風呂も滅多に入らない。夜が心細いのだろう。突然苦しまないか、息が止まらないか、遅い夜明けを布団の中で待つ。熟睡が出来ないから頭は1日中スッキリと…

カーラジオ

残念ながら、予想通りだった。この2ヶ月近く自分でも驚くほど働いたのでいずれきっと不調にみまわれると思っていた。それも問題が片付いてほっとした頃に。又元々季節の変化する頃にトラブルが多い僕には今は鬼門そのものだ。昨日の午前中から腰が痛み始めた…

活性酸素

辛いだろうな、辛いだろうな。まるで40年前の僕自身ではないか。君の辛さはもう40年前に味わった人間がいて、でもそいつは辛かったけれど決して不幸ではなかったよ。世間並の希望を持ってそれなりの努力をしたかっただけなんだ。終わってみれば、人生そんな…

広告

まず電話がかかってきて、その後FAXが入ってきた。NHKの健康番組と連動した雑誌の広告掲載の案内だった。よく目にする雑誌の名前だからここに書けば誰もが分かるだろう。興味がなかったので金額のところしか見なかったが、なんと1ページが120万円…

目の前の人

ほぼ30年間、昔ながらの形態の薬局をやってきた。たいした薬局ではないが、毎日やってきてくれる人を懸命に応対した。目の前にいる人に集中して30年来た。目の前にいる人、それは一寸疲れてリポビタンを飲みたかった人かもしれないし、漆にかぶれた皮膚…

発泡酒

仕事を終えて 街灯もまばらな道の端を歩き 白いビニール袋を大げさに揺らし ここに人が歩いているぞと車に知らせる 跳ねないで 今日は少し幸せなのだ ご褒美に発泡酒2本買いに 自動販売機まで行くのだから 秋が背中に降りて来て 冷気が笑っていようとも 今…

冗談

ほんの冗談だったのかもしれない 池を見て海と言ってもいい 丘を見て山脈と言ってもいい 吹きぬける風を 魂の葬列と言ってもいい 血の気の失せた精神はその場に座り込み、乾ききった空気で肺泡を傷つけていた ほんの戯れだったのかもしれない 海が焼け空が深…