合唱

 昼食時、NHKテレビで、中国地方中学校合唱コンクールの番組を見た。偶然回したチャンネルだが、その美しいハーモニーに瞬時に魅せられて、最後まで見てしまった。歌の素晴らしさは勿論だが、あごをひいて大きな口をあけて真剣に指揮者を見ながら情感を込めて歌う姿に感動した。おそらくかなりの練習を積み重ねての晴れ舞台なのだろうが、そこに至るまでの道のりと達成感が、心に迫ってくるものがある。僕には連想する青年前期の記憶はないが、卒業した子育ての映像が蘇って、涙が溢れてきた。多くの純情が沈殿した聞き手の心を救う。美しい歌声、美しい生命。地域に育まれた純情がブラウン管から溢れてくる。どこかの指導者が、美しい国などと言って、ものも言えないような社会を作り、従順な羊を国中の放ちたいらしいが、美しさは力で作るものではなく、あふれ出るものなのだ。少年少女の足許にも寄れないような不純の塊がこの国を醜くする。あの歌声に耳をすませ。謙虚な心で。世の醜い大人達。