冗談

ほんの冗談だったのかもしれない  池を見て海と言ってもいい 丘を見て山脈と言ってもいい 吹きぬける風を 魂の葬列と言ってもいい 血の気の失せた精神はその場に座り込み、乾ききった空気で肺泡を傷つけていた

ほんの戯れだったのかもしれない 海が焼け空が深紅に澄みきったとしても、巨像が羽を生やして飛んでいったとしても 押し寄せる波を 涙の津波と言ってもいい 手足は軽蔑の鎖で縛られ さるぐつわは良心の墓標の入り口でしかない

ほんの冗談だったのかもしれない ほんの戯れだったのかもしれない 憐れなほど目を見開き 悲しいほど耳をそばだて 恥ずかしいほどにおいをかいでいた 崩落した岩盤が 出口のない言葉の坑道を塞ぐ