飽気

 久しぶりの雨が降っている。人工ではない自然の冷気が忍び寄る。乾燥しきった僕の心にも雨が降った。涙の雨が降った。子が親を殺し、親が子を殺す。地球は沸騰し心は冷める。爆弾で遊ぶ子供達の肉片が飛ぶ。正義はいつも臆病で、悪意はいつも勇敢だ。饒舌は沈黙の前に沈黙し、加害者は被害者より数段被害者であるべきだ。袋小路に迷い込んだ精神は、磨耗したレンガの表面より即物的で、旋律を失った打楽器よりはるかに創造的だ。爪を研ぐ道徳は、飲み干されたコーヒーカップより香ばしい。希望を抱いては眠れない。夢を追っては眠れない。「飽気」の夜は眠れない。