見積もり

 今まで聞き流していたようなニュースでも、いざ経験して見たら、耳がすぐにキャッチする。こうして人間は(動物も)身を守るのだろう。
 ドッグランの東側は、従来山だったところを削って、住宅用に平地にしているから、ほぼ垂直近く法面が残っている。当然そこにあった木は、西方向に根を張ることが出来ずに、天を目指して姿勢よくは伸びていない。ある大木はドッグランの方に傾いて、天然の巨大傘を作り、夏の日差しを遮ってくれていた。
 ところが先日その大木の枝が折れて落下し、フェンスを大きく壊した。人が直撃を受けていたら、当然全国版のニュースになっていただろう。
 その大木は近所の方の山に生えているもので、虫に食われていることが分かったから、本来なら根元から切ってくれるように頼めばいいのだが、何せその持ち主が90歳になっているから、あまりにも気の毒で頼むわけにはいかない。
 そこでドッグランの設計から工事からすべてお願いしている方に見積もりを頼んだら、根元から切って廃棄までしてくれる費用が28万円弱だった。もう10年以上前にその隣の巨木を当の老人が切ったときに30万円だったから、あながち高額ではない。ただその方が後悔していたことがあって、近所の工務店さんに頼まれまくってしぶしぶ「やらせた」ら、根元近くから切っただけで、何の処置もしなかったから、数年もしないうちに元の巨大なクスノキに戻った。近所のよしみで強引に頼まれて30万円捨てたと今でも嘆いている。
 そのこともあり、見積もりの内容も合点がいかなかったので、親子2代で僕の薬局を利用してくれている「植木屋さん」に見てもらった。すると若社長が答えたのはなんと9万円。「3分の1か!」僕は、彼が現場を見ている時にはいなかったので結果を娘から聞いたのだが、思わず下品な声をあげた。
 まさにしてやったり。実は「高所作業車回送料込」と言う項目が引っ掛かったのだ。車を持ってくるだけで7万円?全くの素人だが、そんなにかかるものかと素直に感じてしまった。ひょっとしたらこれは距離に比例するのか?それなら近所の業者だったら?と思い付いたのだ。
 何かを作る時なら実績や知識を買うが、ただ切って捨てるだけだから、作業内容に差はあまり考えられない。僕は植木屋さんと言うのが具体的にどんな仕事をするのかほとんど知らなかったが、彼が薬局の目の前で、中学校の植木をそれこそ高所作業車に乗って太い枝を切り落としていたのを数か月前に何となく見ていたのだ。
 今彼に電話をして、老人の代わりに僕が伐採を依頼すると伝えると、彼は気の毒に思ったのか「それならもっと倹約しましょうか?枝を切り落とすだけならもっと安くなります」と言った。巨木が倒れたりしたら倹約どころではないので、その倹約は出来ないと彼に答えた。
 これだから田舎には大金持ちがうまれない。でも意外とみんな潰れずに、細々と、いや、ひょうひょうと商売している。

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