都会の方にはこのこだわりは不思議かもしれないが、「熊よりはまし」と言う自虐ネタも出るくらいだから、結構精神的には追い詰められている。何の因果か、コロナより厳しい行動制限なのだから。
日没後完全に暗くなってからは外を歩かない。車で移動し、目的の建物に入るだけの距離を歩くにとどめている。夜間明るいところなどほとんどないから、せいぜいコンビニの前だけが安全地帯か。
朝は明るくなってから行動するようにしている。去年までは薄暗くなったらもういてもたってもおれずにドッグランに行き草を刈ったり、枯草を燃やしたりしていたのに、今年はすっかり明るくなってからでないと出かけないようにしている。何となく危ないような気がしていたから。
案の定、今朝ドッグランに行くと、段々畑の一番上を大きな黒い動物が動いているのが見えた。数十メートル離れているが、すぐ近くにもう少し色が薄い動物も見えた。フェンスの中にどこからイノシシが侵入したのだろう、よりによってウリ坊を連れた親イノシシが。穴でも掘って侵入したのだろうと思い、思わず僕は後ずさりした。そうして逃げようかどうか迷っている間に、その近くに人間がいることに気が付いた。
そこでやっと気が付いた。あれは近所のドーベルマン君とワイマラナー君だ。イノシシ怖さで大型犬がイノシシに見えただけの話だ。それだけ恐怖感を内在させているのだろう。
安心して飼い主さんと話を始めると、ついさっきイノシシがドッグランのフェンスの外を歩いていたと教えてくれた。ドーベルマンのジニー君が追い払ってくれたらしいが、どう見てもその時間帯は薄暗くはない。すっかり明るくなっていた。まさか明るくなってイノシシが出る?と高をくくっていた節もあるが、さすがに予感が当たったのは気色悪い。どんどん人間様の安全地帯が狭められているように思える。
太ももの大動脈を食いちぎられ、10分余りで息絶えると言うまことしやかな話を聞いてから、本気で気になりだした。朝は朝星夜は夜星、僕のモットーがイノシシごときに邪魔されるとは。