待ち時間

 まさに僕はこの子のためにドッグランを作ったのだ、そう思った。そして出来る限り「この子」を増やしたいと思っている。
 この子を連れてきた飼い主さんは、ご両親ともお世話をさせてもらった。病気が難しいかったので、満足がいく結果を残せたかどうかは疑問だが、お嬢さんはずいぶんと感謝してくれ、今でも通ってきてくれている。
 彼女が留学するときなどとてもうれしかった。帰国してのお土産話も楽しかった。元々寡黙な方だったが、外国での暮らしがとても楽しかったことを聞いて、その行動力に目を見張ったものだ。日本独特の人間関係の湿気が、外国では乾燥注意報くらいに違うことが、彼女の留学生活を助けたのだと思う。外国ではのびのびとできる人は意外と多いものだ。
 彼女は漢方薬を取りに来るとき必ずワンちゃん同伴だ。トイプードルで相談机の上を少しだけ歩きまわって。彼女の膝に抱かれる。最初に来た時からはずいぶんと慣れてくれて、今では鼻と鼻がくっつくくらいまでは接近してくれる。ただまだ舐めてはくれないから、少し距離は残っているみたいだが。
 僕の薬局は動物同伴自由だから何も気にならないのだが、彼女はさすがに気になるみたいで遠慮気味だった。回数を重ねて以前ほど神経を使わなくなってくれたが、やはりどこか遠慮はあるのかもしれない。
 犬連れで来る人に、ゆっくり、それも楽しみながら薬が出来上がるのを待ってもらえればいいなという思いが、ドッグランにつながった。特に漢方薬や病院の多剤投与は時間がかかるから、気兼ねなくゆっくり作らせてもらえれば当方としては有難い。
 待ち時間を気にせずに作らせていただけるのは、当方にとっては一番望むところだから、ドッグランは当然無料解放だ。1時間でも2時間でも当方は困らない。もともと、ドッグランで利益を上げようなんて考えてもいなかったので、薬を作る側も頼む側も、時間を気にしなくて済むというのは唯一の目的だ。
 漢方薬を作ってから、ドッグランに行ってみた。彼女と〇〇ちゃんが楽しそうにベンチの近くにいた。〇〇ちゃんは僕を見つけて駆け寄ってきたが、そのまま広いドッグランの中を駆け回った。これこそが僕の願った光景。僕がいて、僕の漢方薬を飲んでいる方がいて、その方が愛するワンちゃんがいる。

 

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