発泡酒

仕事を終えて 街灯もまばらな道の端を歩き 白いビニール袋を大げさに揺らし ここに人が歩いているぞと車に知らせる 跳ねないで 今日は少し幸せなのだ  ご褒美に発泡酒2本買いに 自動販売機まで行くのだから 秋が背中に降りて来て 冷気が笑っていようとも 今日は少し幸せなのだ 落し物を見つけたような 過ぎ去った時間を戻せたような  ぜんまい仕掛けの人形が 跳ねて宇宙に飛び立つような 今日は少し幸せなのだ 

忘れていた笑顔を少し 思い出したような 親切を少ししたいような 悲しい人を背負いたいような 見上げて星の遊戯を見てみたいような 風の唄を聞いてみたいような 電信柱にさえ 礼を言って頭を下げたいような 家路を急ぐ車達 今日は僕を跳ねないで 今日は少し幸せなのだ 100円玉4つで音がする 過ぎ去った時間の音がする 悠然と道を横切る痩せ狸 ねぐらを出たのか帰るのか 今日は少し幸せなのだ