空席

 さくらと言うからには、車体に桜の絵が一杯描いてあるか、寅さんの妹が乗っているか、不人気のためJR西日本の社員が一杯乗客を装って乗り込んでいるのかと思ったら、ごく普通の見慣れた新幹線がやってきた。強いて言うなら車両の数が少なくて、以前のレールスターを思い出させた。今でもレールスターがあるのかどうか分からないが、電光掲示板の時刻表にレールスターの名前は見なかったような気がした。 正月にかの国の女性達を神戸に連れて行ったことに味を占め、いや、元町の本格的な中華料理の味ではなく、結構ハードな移動に耐えた体力のことだが、今年から又県外の勉強会にもできるだけ参加してみようと思った。その再出発の日が今日で久し振りに広島に行った。数年前までは毎月2度くらいは県外に出かけていたのに、この数年教会に行きだして勉強会の出席は県内に留めていた。今日ある勉強会に出席して、それなりの気付きを貰ったが、一体僕は数年間でどのくらいの知識を得るチャンスを失ったのかと少し残念に思った。  自分で勝手にイメージしていた教会とやらに行けば心が洗われ、ひいては患者さんにとても良い影響を与えられると勘違いしていた。特に心の病気などはより治してあげやすくなると思っていた。ところがそこは教えとは裏腹に、単なる勝ち気な人間が信心を逆手にとり自分たちに居心地の良い空間を作る場所だと分かった。恐らくどんな宗教でも同じではないか。宗教どころかあらゆる組織に於いて同じことが言える。  きれい事にうんざりしたから、これからは再び実践に戻る。勉強会で得た知識で、次の日にはもう人助けが出来る可能性があるのだ。そんな感動をみすみす失う必要はない。僕にあるかどうか分からないが、正義とか優しさとかを実践できるチャンスをより多く得たいと思う。 それにしても新幹線の自由席にこんなに空席があたっけと言うのが、神戸と広島に行った印象だ。僕の記憶ではほとんどデッキに立っていたように思うのだ。それがいやでこだまを出来るだけ利用していたのだが、この2回に限ればその必要はなかった。乗客が減ったのか、運行回数が増えたのか分からないが、大いに歓迎だ。薄っぺらい専門誌一冊読む間に着いてしまう。