ライフワーク

 この時期にしてもう今年の流行語大賞は決まった。そんな面白い言葉を今日聞いた。電話中に聞いたときはふと笑いがこぼれただけだが、受話器を置いてから思いだす度に笑いが込み上げてくる。なんて上手いことを言ったのだろうと感心した。 こうして書くと楽しいことのように聞こえるかもしれないが、実は本人にとってはとても辛い出来事だった。良く知っている方の妹さんのことだから、こうして書かせて貰う。 不妊治療を手助けする漢方薬を飲んでもらっていたが、妊娠の報告の後すぐに子宮外妊娠だと分かって本人は勿論お姉さんや僕までもが落胆した。その処置が今年に入ってから無事行われ、久し振りに電話をくれたのだが、これからも漢方薬を飲むと言うから、まだ頑張るのと僕は尋ねた。何故なら彼女には一人お子さんがいるから、そんなに高額な費用を払ってまで頑張る必要があるのかと思ったのだ。僕は知らなかったが、体外受精の費用は1回で50万円くらいするそうだ。その僕の質問に対して彼女が言った言葉がまさに流行語大賞候補なのだ。「ほとんどライフワークみたいなものですから」  本当に彼女は不妊治療に熱心なのだ。お子さんがまだいない人にも負けない熱心さだ。その事がこの1年くらいのお付き合いで良く分かっていたから、あの言葉が実感を込めて伝わってくる。ただ笑いながら言ってくれたからこちらも笑いを誘われたが、ユーモアで包んで返す機知が有り難い。本質を疑いたくなるような硬い表現よりはるかに説得力がある。