同級生

 ある年齢に達すると老け具合は上下10歳くらい違うと言われるが、まさに今日そんな見本を見た。 近所にあった薬局が廃業してから、時々見知らぬ地元の人がやってくる。とりとめのない買い物だったが、老人が使うものだった。何気なく応対して何気なく帰って頂いたのだが、その方が薬局から出たところで高級外車から降りてきた女性となにやら話をしている。牛窓には滅多にない高級な車だから、僕の薬局ではその女性を○○○の奥さんと苗字より良く分かるニックネームで呼んでいる。  「まあ、全然分からなかった、同級生なんよ」という言葉で僕は、全然どころかよく分かった。片や80歳が近いと思われるような覇気のない人と、片やまだ60歳代と思われるような覇気のありすぎる人が同級生だとは本人達以上に傍で目撃した僕の方が驚く。「気の毒に、あんなに老けて。私は母親に感謝するわ」と真顔で言う。僕はいつも和服で高級車に乗り自分の店に出かけるその女性に、わざとギャグで応対するのだが、ほとんどギャグも介入できないような現実を見せつけられたような気がした。老けて見える人がおおむね不幸で、逆に若々しい人がえてして幸せだとは限らないが、少なくとも外見と体の中は同じように老けたり若々しかったりするのではないかと想像が付く。体の内外が異なるスピードで老化するとは思えないから。 高級外車の女性によるとその女性は農家に嫁いでいるらしい。昔の農家だから相当働いたに違いない。重労働の上に紫外線の暴露をかなり受けているはずだ。その上にタバコでも吸っていたら老け具合は相当なものになるだろう。片やお客さんに一日中接し、趣味の絵は展覧会でしばしば入選するくらいに腕を上げているのだから、心地よい緊張にいつも晒されているだろう。風邪くらいひけよと思うが風邪も引かない。「幸せを地でいっている」と言う僕のギャグもギャグでなく事実にしか聞こえない。  無限の要素が絡み合い人は皆それぞれの人生を送るのだが、人生の評価を伺わせる風貌にこうも差が出るのかと、改めて驚かされた出来事だった。