高富

「高富?」
 電話相談中にそんな言葉を聞いてしまうとさすがに反応する。高富さんではない。地名だ。ただ僕にとっては高富町ではなく、ただ「高富」なのだ。
 学生時代、ほとんど毎日のように乗っていたバスが「高富行」のバスだったのだ。柳ケ瀬から毎晩それに乗って帰っていた。岐阜バスだとまさにアパートがある三田洞に停留所があるのだが、名鉄バスは直進して高富へと向かっていたはずだ。はずだと書いていたのは手前で降りていて訪ねたことのない町だからだ。どんな町なのか知らない。
 手前の停留所を降りて右に歩けばアパートに帰れ、左に歩けば先輩のアパートに行ける。左に曲がったばかりに僕の思想も左になってしまったみたいだが、高富目指せば中道で無難なその後だったかもしれない。
 左に住んでいた先輩が、本を送って来てくれた。ご自分が書いた文章の先頭に写真が載っていたが、見た瞬間笑ってしまった。「仙人じゃがあ!」
 何時から会っていないのか分からないくらいご無沙汰しているが、そしてその期間分歳を重ねているが、僕などとは全く違った歳の取りようをしているように見えた。僕などごくありふれた老いようだが、先輩のは違う。好奇心がまだまだ表情からあふれている。若者が一晩で老人になったような不正解がにじみ出ている。誤答、正に解答違いの老けよう。行き先が分かっていて旅した僕と、行き先がない旅をした人との違いが、老いようにも出ている。

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