業務用

 今回の改装で、薬局と事務室のエアコンも新しいものに替えた。僕は分からなかったのだが、娘は風が臭くなっていると言っていた。
 ところで薬局のはかつて200ボルトの電源を引いて設置したもので、高かったことだけが印象にある。薬局が13坪くらいあるから、普通の部屋用ではだめだと言われ、200ボルトの電源をわざわざ引いて設置してもらった。天井に穴をあけ天井に組み込ますようなもので、大掛かりな工事だった記憶がある。
 今回のは、普通の家で使うエアコンで十分という情報をいただいていたので、壁に取り付ける100ボルトの機械だ。
 いざ使ってみると今回の家庭用の方が暖かい。金額はおそらく何分の一しかしないのに、暖かさでは勝っている。僕はその風を体験してすぐに、意地悪く当時はめられたと思った。業務用でないとだめだとプロに言われたから素直に信じてそうしたが、無駄な出費だったのかもしれない。
 スイッチを入れるといちいちエアコンがこうします、ああしますと喋ってうるさいが、心地よさは数段の差がある。10数年前に設置した200ボルトのエアコンから現代のエアコンに機器が進歩したのなら喜ばしいことだが、親切を装った押し売りだったのなら残念だ。
 事務室で使っていたエアコンは勿体ないから2階の寝室につけてもらった。もう10数年エアコンなしで過ごしていたから、これまたその暖かさに驚いた。寒い和室、暑い和室と自然と連動して、湯たんぽや扇風機でしのいでいたが、薄着でもいることができる。貧乏人根性で寝る前にはスイッチを切ってしまうが、眠りに落ちるまでは心地よい。
 実はそのころ例の東京のバスの停留所でホームレスの女性が殺された。夜明けまで停留所で眠る女性を、どうしてその男は「3度の食事がいただけ、温かくて安心して眠れる施設」へ追い払わなかったのだろう。もっとみんな格好良く生きればいいのに。