声援

 ある街で、ある若い女性が先生を目指している。過敏性腸症候群でつまずいているが、今なにかが変わろうとしている。いつかきっと克服したら、とてつもない財産として、将来接するであろう生徒や同じトラブルで悩む人達の大きな励みになる。  プライバシーに配慮しながらも、1つだけ彼女とつかんだ秘策をブログを読んで下さっている方に伝えたくて今日のテーマに選んだ。(彼女には電話で承諾を得ている)  彼女はわざわざ遠くから訪ねてきてくれたから、僕は彼女のことが手に取るように分かる。ガス漏れに関しては漢方薬でお世話出来るが、さし当っての教育実習をこなさないと又卒業できない。教室へも入れなかった彼女が、以来、何日も連続で模擬授業を頑張っている。生徒や仲間の視線が怖かった彼女が曲がりなりにも授業を頑張ってやった時、仲間達が励ましてくれたそうだ。今までは孤立していた彼女なのに。その声援がとても嬉しかったようだ。今までの氷のような雰囲気を作っていたのは実は彼女自身なのだ。周りの学生の心など1週間前も1ヶ月前も変わってはいない。今と同じように善良だったに違いない。変わったのは心の門を少し開いて人を受け入れた彼女の態度なのだ。  模擬授業の前日と当日の朝、彼女は泣きながら恐怖を訴えてきた。僕が提案したのは、最初の一発ギャグだ。貴女も緊張するだろうが、そんな貴女を見る生徒も緊張する。だから貴女は生徒の緊張を解いてやる義務があるから、笑わせてやったらと助言した。どうせ誰も勉強なんかしたくないのだから。勉強と吉本新喜劇だったら吉本新喜劇の方が楽しいに決まっている。僕も漢方の講演の時は必ず、「ソ、ドヨンです」から入る。すると緊張が一瞬にして解けて2時間くらいは簡単に喋れる。「私は、薬剤師の・・・」なんかで入ったら、1分も持たない。簡単でとても効果的な手段だから、皆さんも是非使って欲しい。  彼女から授業の後にきたメールを紹介する。試験の発表のように首を長くして待っていた連絡だった。読んだ時涙が出るくらい嬉しかった。

今日はありがとうございました。 授業の前に、不安でつい電話してしまいました。 仕込まれた藤原紀香ネタは、あまりの冷めた空気に押されて、言えませんでした。 最初は、生徒たちに全然笑顔がなくて、みんなすごくだるそうに、 やる気なさそうにしていました。「うわ、○○先生かよ、つまんねえ」みたいな。 昨日の一件で、そうとう印象が悪くなったみたいです。 ちょっと指導したらナマイキ、と呟かれたり、つい「急いでください」と言ったら しん、となったり、「意味わからん」と言われたり。 でも、しっかり話して笑顔で答えているうちに、 途中から雰囲気ががらっと変わって、 授業が終わった途端、生徒がたくさん寄って来ました。 その上、1人に「先生、学園祭に来てください」とまで言われて、 すごく感激しました。 昨日の挽回ができてよかったです。 それから、昨日仕込まれたネタ(私は朝青龍の娘ですと言う自己紹介)を使ったら、面白かったらしくて、 美術部の女の子が毎日遊びに来るようになりました。 今までは、ただやさしいだけの先生だったけど、冗談を言うだけで、こんなに 変わるんだ、と正直びっくりしました。 毎日その子が遊びに来てくれて、楽しいです^^

色々な場所で、色々な環境で自分のトラブルに日々苦しめられている人がいる。頑張りたくて頑張りたくてこれ以上頑張れない。どうすればいいの。泣いて助けを求めたら。声をあげなければ誰も気づいてくれない。善意はいたるところに落ちている。それを見つけるには、助けを求めなければ。一人で頑張ったら底無し沼だ。こんな心の格差社会に誰がした。