質問

おそらく初めてではないか、薬剤師会で漢方の講演会があったのは。ツムラと言う有名な漢方の製薬会社の学術の方と、薬剤師会の会員で漢方に詳しい方の講演だった。二人の講演の後質問の時間を取ってくれたので尋ねてみた。別に聞かなくても全て分かる程度(初心者向け?)のことだったのだが、数百人来ていた薬剤師のほとんどが若い方で、おそらく日々医院の前の小さな薬局で薬を作り、患者さんに投薬する業務をこなしている最前線の人達だと思われたので、暗に先輩薬剤師としてのメッセージを送りたかったのだ。漢方の質問はその道具でしかなかった。直接的なメッセージを送るほど僕は実力もないし、勿論肩書もない。  偶然二人の講演の中で、抑肝散と言う漢方薬の説明があった。癇の昂ぶりを抑える処方で、自律神経が亢進している時に使うものだ。それが痴呆にもいいと言うのが今日の新しい報告だった。そこまで僕は信用しない。ただ、イライラしたりするのには結構効く。講師の先生に、「抑肝散は今日の講義で自律神経失調気味の僕に非常に効きそうなので、僕も是非飲んでみようと思いました。ところで、僕はこの年でまだ、お金も名誉も肩書も財産も欲しいと思います。また、患者さんより医者の方ばかりを向いています。こんな醜い心でも治るでしょうか?」と尋ねた。真面目な講師は丁寧に答えてくれた。会場から笑いが起こり、最前列の薬剤師会のえらい先生方は怪訝そうに後ろを振り返っていた。  例えば、目薬1本を処方箋で薬局で出すと、わずか数分の仕事で、パートや派遣労働者が1時間で稼ぐ金額に匹敵するかそれを上回る。どれだけ体や心をすりへらして、又時間を提供して彼らがこれだけの収入を得るだろうか。最近の医薬分業で簡単にお金を稼げるようになった医院の前の薬局に対して、謙虚であれと、経営者はともかく、せめて最前線で働いている若き薬剤師には謙虚であれといいたかったのだ。経営者にはなにも期待していない。