選択

 介護で稼いでいる最大手の会社が、裏で汚い事をしていた。よくある話だから別に驚かないが、処分を受ける前に会社をたたみ、同じ穴のムジナに譲り渡すそうだ。右手がだめなら左手を出すと言う具合いだ。両方の手は同じ人間から伸びているのに。右手から左手に持ちかえるだけで、許されると考えたのだ。頭の部分は生き延びると考えたのだ。金持ちには、それが汚いやつでも弁護士などがついて悪の指南もしてくれる。だから庶民にはとても考えられないような抜け道を考える。そして、庶民にとっては恥でとても出来ない事を抜けぬけとやる。恥などと言うのはそもそも縁がないのだ。  腹が減って、いたたまれずに無銭飲食をした人間と、国民の納めた税金を何億円も盗んだ人間とどちらが罪人だ。前者は刑務所から出ても何の援助もない。又小さな罪を重ねて生き延びる。後者は、汚い手で稼いだ金をしこたま隠しているだろうから、何らダメージはない。又図太く復活するに違いない。庶民は指をくわえてみているだけなのか。劇場の観客席から眺めているだけか。諦めることは負けることだ。不幸を固定することだ。貧乏を固定することだ。  白いブラウスがまぶしく黒いスカートにはえる。中学生の女の子が、自転車を押しながら大きな声で話ながら帰宅している。道路を横切って聞こえてくる快活な笑い声を奪わないで欲しい。無知で強欲で謙遜を知らない大人達のつまらない選択で。