バレーボール

 およそ、身体によい運動は単純で面白くない。逆に楽しいスポーツは、ほとんどが身体には悪い。  飽き性の僕が、仕事以外に続けられているのは、唯一バレーボールだけだ。もう28年続けている。毎週、日曜日の夜、2時間ゲームを楽しむ。多くの人が入ってきて、多くの人が辞めていった。僕が28年前作ったチームだが、いっしょに発足させた人間は二人だけになった。男女それぞれ色々な年代の人がいるが、この数年僕が最年長になってしまった。  背が高いという理由で今でもアタッカーをさせてもらっているが、28年間、固い床の上を飛びつづけたせいで、首や肩や膝は垂直方向の圧力に抗し切れずに磨耗しきっている。腰も首も毎年激痛を伴う不調に見舞われるし、膝はしばしば正座も出来なくなる。なんとか自分で薬を駆使して、見かけは正常を保っているが、爆弾を抱えていることには違いない。  数年前、ハンドボールの世界選手権に出場したことがある人がセールスとして来たことがある。湧永製薬というハンドボールでは日本一に何回もなっている製薬会社の人だ。彼が見せてくれたのだが、彼の膝の靭帯はほとんど切れていて、お皿が手で動かせば考えられないくらい自由に場所を変えるのだ。見ていて気持ちのよいものではなかった。彼曰く、世界レベルで活躍する人はほとんどがこの程度の負傷を抱えているらしい。レベルの高いところで戦う人達は、僕ら素人以上に体を壊している。でも楽しいのだろう、それでもやり続けるのだから。  黙々とウォーキングしたり、プールの中を歩いたり、ラジオ体操をしたり、ストレッチしたり、全部僕は苦手だ。ギャグを連発しながら、二十歳くらいの人間を相手にむきになったりして、汗をたらすほうが余程楽しい。この歳でまだ上達したいなんて思っているから手におえない。いつか、身体によくて面白くない種目に移らないといけないが、まだおしいような気がする。関節は悲鳴を上げているのだが、幸運にも心がまだ悲鳴を上げないでいてくれる。