ミミズの足

ふくらはぎや大腿部の血管が紫色に怒張して、まるでミミズがいっぱい這っているような初老の女性(下肢静脈瘤)を半年くらいお世話している。真面目に煎じ薬と天然薬を飲んでくれたお蔭で怒張はかなりなくなり、痛くてふくらはぎの一部が茶色に変色して盛り上がっていたのもほとんど治った。  それに気をよくして今日、その女性にある治療を頼まれた。去年の夏タイから帰国して胃の痛みに襲われた。胃カメラを飲んだら潰瘍が見つかり、3ヶ月治療したが治らなくて、大きな病院に行って手術するように言われ紹介状を書いていただいたらしい。ところが本人は、手術が嫌だから、大きな病院に行かなかったらしい。1年近くたって、市の検診で、再び潰瘍が見つかり精密検査を受けるように指示があった。そこで、静脈瘤を改善した僕を思い出し、何とかしてくれと言って来られた。自分の感情が先走り、旨く説明出来ない彼女に繰り返し質問して僕は情報を集めた。この数年、潰瘍にはとてもよい薬が開発され、今では手術をする人は激減しているはずだ。3ヶ月も治療をして潰瘍が治らなくて、手術をするようにといって開業医が紹介するはずがない。僕は、一番嫌な病気を想像しながら問診をすると、かなり当てはまるのだ。女性は、なんとか自力で治そうと思っているが、僕は最悪の病態の方が説明がつくと感じた。がんとして、大きな病院へ行こうとしないので、2週間分だけ胃の薬を渡した。2週間で治らなかったら、精密検査へ行くことをあきらめさせるために出したようなものだ。簡単な薬で治ればそれにこしたことはない。誰だって検査や手術は避けたい。僕もその筆頭の人間だ。しかし、ここまでいやな情報が集まるとそんな事は言っておれない。あの女性が早く人生を終えることを防がなくてはならない。 残念ながら、ある年令に達すると、嫌な病気に忍び寄られる。長寿の方を見るとそれだけで太刀打ちできないくらいの偉業に見える。戦後生まれの人間は、不自然な空気を吸い、不自然なものを口に入れ始めた最初の世代だ。その結果がもう出始めている。半世紀を経て壮大な人体実験の結果が出始めている。この数年始まった、電磁波の中での暮らしの結果は、又何10年後に出始める。進歩とは決して発展への道のりとは思えない。