泥に咲くレンゲ

 何の為に、何の為にと人生は繰り返す。目標を持って日々努力せよと言われるが、その目標がいたって怪しい。勉強を頑張って目標の中学、高校、大学に入り、社会人になってからは、懸命に働いてお金を貯め、車を買い、家を建てる。たまに旅行で羽をのばし、おいしいものも食べてみたい。その時々で目標は異なるだろうが、代表的なものはこんなものだろうか。  こうしてみると、目標のほとんどは物でしかない。僕らは、物を得るために日々努力しているのだろうか。物は懸命に働けば手に入る。盗んでも手に入る。僕らは一生のうちに多くのものを手に入れる。だけどそれで満足感はあるのだろうか。物は手にした時から目標ではなくなる。更なる目標が必要だ。  物は目標ではない。単なる道具に過ぎない。僕らは目標の奴隷になってはいないか。レンゲは泥の中に咲くから美しい。人間も、この醜い世の中で正直に生きた人が美しい。僕らが生きる目標は、やはり人間なのだ。物の為にではなく、人間のために生きる。その為には多くのものは必要ではない。必要なのは見えはしない。もっと、もっと人を大切にできる心。その心を少しでも多く増やすことが目標だと思う。