倉庫

 まだ物不足の時代に育った僕にとって、どうにも合点がいかない。この半年で5つものパソコンを買うはめになったことだ。そのうち3台は必要な機能が使えなくなったり、壊れそうになったから買い換えたのだが、甚だしいのはまだローンが数ヶ月残っている。およそ身の回りにあるもので、まだ使えるものを捨てるようなことは滅多にないから、甚だしく浪費しているような自責の念に駆られて仕方ない。パソコンに関してすべて面倒を見てくれている商工会の方がそんな僕の気持ちを察して、その世界の常識を説明してくれるのだが、頭では分かっても心情的にはついていけない。もったいないを連発されて育った人間としたら、やはり物は使い切りたい。  機械に疎いしあまり興味もないので、今日購入したパソコンについての説明を聞いたわけではないが、なにやら今まで使っていたプリンターに接続すれば、スキャンするだけで膨大な資料を保存できるらしい。大切なことは自分でノートにまとめなければ気が済まない僕にとっても、次から次へと送られてくる情報雑誌が溜まっていくのは実はストレスになっていた。しかし、商工会の方の説明によると膨大な量のデータが簡単な操作で保存できるらしい。安いパソコンだが機能はそこまで進化しているらしい。ボールペンを走らせながら、紙の上と、ついでに脳の中にも知識を保存させていたのだが、これで僕の脳の中には保存できなくなった。何の努力なしに知識が蓄えられ知恵になるとは思えないから。 これで僕は単なる倉庫だ。施錠され物を取り出すことが出来ない錆びた倉庫だ。はい回るネズミがいないだけまだましか。