家族

 もう夜は明けていたのだと思う。インターホンの音で目覚めた。応対に出た妻が二階に上がってきて、インターホンの主が必要としている薬の名前を書いたノートを見せてくれた。旅行中の方で、至急薬が必要だったみたいだ。あいにく病院用の薬で僕の所にはなかったので、町立病院を紹介した。  お昼前、その方々が寄ってくれた。家族5人が可愛い犬を連れて牛窓のペンションに泊まりに来ていたみたいだ。必要な薬をもらえて症状はだいぶ収まっていた。ペンションのオーナーに紹介されて漢方薬を取りに来てくれたらしいが、僕が興味を持ったのは、お子さん達がとても仲がよいことだ。男の子3人兄弟なのだが、僕の生い立ちからして男3人が仲が良いなどと言うのは考えられない。恐らく長男は20才前だと思う。下の二人は中学生だろうか。車を降りて、犬を抱いたり遊ばせたりしている姿が何とも言えない穏やかな雰囲気を作っていた。もっとも、男3人だから元気ではあるが、不快さを全く感じさせなかった。  親の薬を作った後、ついでに長男の健康相談にも乗ったが、下の二人が薬局の外に出てから僕と対峙した時のすがすがしさに驚いた。たっての希望でお父さんの商売に、ある分野を加えて新しい展開を企てているらしいが、あの若さでその発想とやる気、そしてそのために必要な「人当たりの良さ」に感心した。育つうちにつかんだものか、与えられたものか分からないが、あの若さで身につけた「人当たりのよさ」は大したもので、恐らく彼自身をこれから一杯助けるだろう。淡泊な兄弟関係のまま育った僕からは、何ともうらやましい光景だった。知らないだけで、いっぱいこのような家庭は存在するのだろう。家庭力の差を思い知らされた家族だった。