資源

 看板はドラッグストアとしてあったが余りにも大きな建物なので、ひょっとしたらFAX用紙も売っているのではないかと思い入ってみた。職業柄ドラッグストアには用事がないから滅多に入ったことがないので内部の光景は珍しかった。初心者の僕の結論は「FAX用紙以外なんでも揃っていた」と言うものだ。ある壁面一杯に医薬品が、まさに延々と並べられていたが、そこ以外はスーパーと呼ぶべきか、ホームセンターと呼ぶべきか、いやいや恐らくこれこそをドラッグストアと呼ぶのだろう。 一見膨大な薬の量に見えたけれど、同じ薬で量感を出しているだけだった。ただ目薬だけは、何を基準に選べばいいのかと思うくらい種類が多かった。棚に並べているだけでいいのかなと正論が頭に浮かんだが、これはこれで利用者がいるのだから僕らとは異次元の世界なのだと納得した。  驚いたのは、漢方薬もいっぱいあったことだ。○○する人の○○のように日本語が読めれば薬が選べられるようになっていた。僕が30年前、独学で漢方薬を勉強しようとしたときと同じだ。簡単な解説書に書いている漢方のイロハだ。ただ、その知識で数年頑張ったが、たった一人しか効果を出すことが出来なかった。その効果も偶然だったとしか思えないが。○○ですむなら勉強をする必要はない。当時の僕レベルを巨大な組織が会社を挙げてやっているのだから、如何に効かないものを販売し、如何に生薬資源を捨てているかだ。天然の生薬の枯渇が懸念されているときに、この膨大な無駄は地球にとっての損失だ。ただ、知り合いのその種のストアで働いている薬剤師が、ドラッグストアって薬は思うほど売れないんですよと教えてくれたから安心しているのだが。本当に漢方薬でしか治らない人のために、肥満などどうでもいいようなトラブルには使わないで欲しい。そうしないと近い将来、漢方薬はお金持ちしか飲めないようになってしまう。  そもそも、僕がそのドラッグストアで、その漢方薬を使って誰かを治して見ろと言われても、恐らく誰も治すことは出来ないだろう。僕が使って治せないようなものを素人の人が自分で選んで治るはずがない。膨大な薬の陳列は一見豊かさを感じさせるが、その内実は実に貧困だ。まるでこの世界まで自己責任を強要されているようにも思えた。薬の棚の前で途方に暮れ、渋々財布に手を伸ばす人達が見える。