絶滅

 ああ、やっぱりそうか。あの人口の多い国でむやみやたらに漢方薬を使われたら、あっと言う間に生薬資源など枯渇してしまう。素人の僕でも分かっていたことがやはり着実に、いや予想以上に速く進んでいる。値段が仕入れるたびに上がっているのに驚くが、値段どころか仕入れられなくなる可能性だってあるだろう。漢方薬が、病院でメーカーの口車に乗って安易に処方されるのを危惧していたが、病院どころか、3億人の人口を誇る国のことをこれからは心配しなければならない。と言っても、日本語が通じないから文句を言っても届かないが。 アメリカに住んでいる人が一時帰国したのに合わせて漢方薬を取りに来てくれた。ここぞとばかりあの国の医療について質問したら、医療制度のこと以外にも、漢方薬がとてもブームで多くの医師が処方すると教えてくれた。霊芝がブームだとも教えてくれた。霊芝は今では日本ではほとんど評価されていないから構わないが、正式な漢方薬がアメリカで汎用されるのは困る。贅沢を誇ったり、偏った食事しかできない人達を治療するのに生薬はもったいない。現代薬で十分対処できるものは現代薬で対処して欲しい。漢方薬は現代医療で落ちこぼれた人達のためにとっておくべきで、この後、百年、千年先の人間も利用できなければならない。僕達が絶滅させていいはずがない。頭の良い人間だったら誰にでも分かることだが、頭が良くて良心、いや倫理観が備わっている人間は、世界中の企業や役人の中にはいないらしい。