余地

 漢方薬って長く飲まないと効果がない、といわれていますが…?と言うタイトルのコーナーに回答を寄せてと頼まれたので、以下のような短文を書いた。ちょっと行儀がよすぎるのでもっとざっくばらんに書き足してみる。  漢方薬も立派な薬だから、数十分もしたら効果を発揮する。例えば腹痛やむかむかなどは出来るだけ早く抑えてあげないと意味がない。そんなときに何の迷いもなく僕は漢方薬を使う。すぐに効果が出るのが分かっているから。それでは痛みでも頭痛や歯痛、神経痛などはどうだろう。逆に現代薬を迷わず使う。慢性のもの以外にこの分野で漢方薬を使うことはありえない。  僕は冒頭のタイトルみたいな質問が漢方薬に限って飛ぶのは、嘗て漢方薬で飯を食っていた人たちの罪だと思う。実力不足で本当に時間がかかってしまったのか、或いは効かなくても長い年月漢方薬を飲んでもらうために考え付いた妙案か、どちらかだと思う。全ての人が正しい仕事をし、正しい啓蒙を行っていたら、こんな質問が出る余地はなかったはずだ。余地を作ったのは先人達の一部?の人達だ。だからこんな質問をされるのは僕らが最後にしなければならない。

「僕が漢方薬を勉強しようと思ったきっかけは、40年前に田舎に帰って父の薬局を手伝い始めた頃、店頭にやってくる人が10年も20年も病院の薬を飲み続けていると言う話をしばしば耳にしたからです。当時若くて健康だった僕には、不思議な会話でした。「治らないのに病院に通い続けているの?」と言う素朴な疑問でした。「治してもらえないのによく我慢しているな」とも言える心境でした。漢方薬を勉強し始めて、現代医学で治らないものが治る事も知ったし、現代医学より早く治る病気があることも知りました。逆に現代医学の素晴らしさもより深く感じることが出来るようにもなりました。結局40年漢方薬を勉強して言えることはシンプルです。漢方薬でも現代薬でも、急性のものはすぐに効くし、慢性のものは時間を要すると言うことです。漢方薬は決して奇跡を起こすものではなく、漢方薬が適している症状を見つけて、その症状にシャープに効く処方を見つけることにつきます。生薬が枯渇している今こそ、漢方薬の出番を見つけ、より確実に効果を感じてもらえるように努力することが医療者側に要求されています。」