鍵穴

 長い間治らなかったものが急に改善したりしたら、喜ぶ前にその改善振りを疑うらしい。ぬか喜びは絶対にしないぞと言う並々ならぬ決意が伝わってくる。僕がいつも言う、1割症状が改善しても随分と楽なのだから、半分以下に2週間でなったのだから、苦虫をかみつぶすような顔をせずに、ニコリくらいすればいいと思うが、帰るまで結局は頬の筋肉を緩めなかった。 僕は決して漢方オタクではないから、漢方薬が一番いいなどとは思っていない。何を利用してでも不調が改善してくれればそれでいい。ただ5年間も病院に通って治らなかった○○○が2週間でかなり良くなれば、漢方薬を褒めたくもなる。ところが本人にしてみれば、ぬか喜びで終わったら後のショックが大きいから、用心して成り行きを見ている。この調子がもう少し続いてくれれば信じてもらえるのかもしれないが、その頃には治ってしまうのではないかと僕は思っている。鍵穴にぴたっと合えばとてつもない効果を漢方薬も現すことが出来るが、その確率を高めるべく日々研鑽している。何せ薬局は現金商売だから、効かない薬を売りたくない。ただそれだけだ。ただそれだけでも、聞いたら礼を言ってくれとはいわないが、少しは喜んで頬の筋肉を緩めて欲しい。その表情こそが僕達の喜びでありモチべーションなのだから。