特権

 僕がお世話をしている漢方の勉強会は、岡山でやっているからその点は恵まれている。会のための多少の事務的な手続きや会計は、勉強のために他府県まで出かけていくことを思えば負担は少ない。世話をする人間の特権を利用させてもらっている。  他府県から来る会員の方が多いのだが、僕の年齢の前後10才くらいの幅だから、みなぎる元気の持ち主はいない。寧ろストレスの多い仕事を懸命にやっているというのが現状かもしれない。ストレスの代償として喜びをしばしば頂くから誰も辞めずに頑張っているのだろう。勉強の前雑談をしていると、年末年始に体調を崩した人が数人いた。ほとんどが風邪が引き金だったみたいだが、症状も激しく回復までに時間もかなりかかったらしい。年齢的に免疫が落ちてきていることもあるし、職業的に濃厚な感染に見舞われることも多い。自営だから交代要員がいなくてなかなか養生も出来ない。それら三重苦を克服して勉強会に出席しているのだから頭が下がる。決して派手な集団ではなく、何とか地域の人の役に立てるようにと勉強している小さな集団だが、時流とは逆行気味の変人の集団でもある。  みんな手元にはよい薬を持っているはずだが、嘗てのようには治らない。最大の要因は肉体的な若さの喪失だ。生命力みなぎる若さは、病気を驚くほど早く治してくれる。どんな薬も太刀打ちできないくらいの力を持っている。このうらやむべき力を持っている人達は、自分の力を信じてほしい。将来失ってから分かるだろうが、どんなものより価値がある。自然治癒力を失いつつある人間が、自然治癒力の旺盛な人に薬を作る。作る方が実際にはうらやましがっているかもしれない。僕なんか、「ああ、僕なんかよりずっと元気だから早く治ってね」と思いながら薬を作ることが多い。