反省

 ああ、なんていいお嫁さんをもらっているのだろうと思った。 息子かわいさ、孫かわいさからお嫁さんの相談に来られたのだが、僕はそのお嫁さんに会って、家族の心配が家族だからこその気の回しすぎだと言うことに気がついた。何も心配することはなく、本来持っている能力を生かす場所や時間を与えてあげれば懸念は一掃されると思った。懸命に妻として母としてあるべき姿を演じていて、そろそろ体力というバックボーンが劣化し始めただけなのだ。だから見ようによっては心を病んだように見えてしまうだけで、実は第3者が見たら羨ましいくらいの人物だった。「私はうつ病かと思っていました」と安堵の声と共に大きな涙を流す姿は、頑張った人にしか分からない緊張感から解き放たれる瞬間だ。失敗も落ち度も自身で許すことが出来ない人達の落とし穴に落ちてしまっただけなのだ。  幸い、彼女の義理の両親がしばしば漢方薬を取りに来ていたおかげで、病人にされてしまう前にお世話できた。以前数回薬局に来たことがあったが、笑顔を見たことは一度もなかった。ただ今日30分くらい話をしたら、一杯笑ってくれた。そして2週間前には懸命にこらえていた涙も一杯流してくれた。「あなたは絶対病気ではないから安心してね。もし僕の見立てが間違っていたら責任をとって薬剤師を辞めて俳優になるからね」と言ったらとてもいい笑顔になった。ただ後半の部分で又ちょっとだけ不安になったかもしれない。いらぬことを言わなければよかった。「薬剤師を辞めて歌手になる」と言うべきだった。反省。