牡蠣剥き

 牡蠣の殻を割いて中から身を取り出す作業をこの辺りでは「牡蠣剥き」と言う。漁師の家族だけではとても手が回らないから、地元の女性を雇う。50年前に、僕が帰ってきた頃は牛窓には、牡蠣の養殖をしている漁師が沢山いて、その分牡蠣剥きの女性も沢山いた。
 当時は若い人も冬限定のアルバイトで牡蠣剥きをしていたが、今は当時の若い人がそのまま年を重ねていて、伝説の牡蠣剥き名人達もすでにこの世を去っている。
 80歳を超えても、熟練の技は貴重で引く手あまた。年齢を理由に引退をほのめかしても辞めさせてくれない。多くは仕方なくと言うか、田舎特有の義理で体に鞭打って、寒いコンクリートの床の上に腰掛け黙々と牡蠣剥きに励んでいる。
 実はこの黙々が結構怪しくて、口から生まれた人も多く、手先より口の筋肉ばかりを動かしている人もいる。そうした人の特徴で、聞く人によっては不快な話題が多い。
 この女性はそれに耐えられず心が折れそうになった時に、敬〇〇を服用していただいたら意外と早く割り切れ、疲労も全く違うと言うので気に入り、その後同類のストレスで悩んでいた仲間にも、紹介して、その人を救ってあげた。
 折角精神的にはほぼ持ち直しているのに今度は肋間神経痛になった。それはそうだろう、ストーブを抱えていると言ってもほぼ戸外と同じ環境。80歳を過ぎて、委縮した筋肉で嘗てと同じ作業が出来るはずがない。胸の痛みを訴えてきたから肋間神経痛の漢方薬を作って飲んでもらうと、これも結構早く痛みが軽減。
 頑張っては痛くなり漢方薬で治し・・・これをもう3回繰り返している。でももう辞めようかなどは言わなくなった。漢方薬を取りに来るときにも、あまり痛そうな表情もないし、笑顔が多い。
 いつまで働くかなど全く僕が介入できないが、皆さんによく言っている言葉は女性にも掛けている。元気で長生きに一番効くのは、仕事をすること。2番目は犬を飼うこと。
 女性の半分くらいは人生90年。ボーっとするんじゃねえよ!チコちゃんに叱られる!

https://www.youtube.com/watch?v=ONk-bwMcFkI