ツバメ返し

 今日ユニークな話を聞いた。  家族が牛窓に引っ越してきて、その手伝いのために滞在している人らしい。田舎住まいを望んで牛窓に来てくれたらしいが、牛窓の評価をツバメを通してしてくれたのだ。その方によれば「こんなにツバメの巣が家々にあって沢山飛び回っていると言うことは、思いやりが町の人にあるってこと」なのだそうだ。毎年我が家にもツバメが訪ねてきてくれるが、カラスに卵を食べられないように知恵を絞るのを恒例にしている。その事を別段手間だとは思わない。寧ろ弱い者の味方をするのは日本人の得意とするところだ。何の疑いもなく毎年そうしている。恐らくどの家の方も同じ理由だと思う。それを敢えて人情溢れると評価してくれたことが嬉しかったが、都会の人から見ればそうなんだと視点の違いに驚いた。また「ツバメにばかり味方して自然の摂理に介入していることがいいのかどうか分からない」と言うと、ツバメは益虫だからそれでいいようなことも言われた。余程ツバメが好きと見えて、間髪を入れずそう言った。  自然の中にどっぷりと浸かっていて、自然など全く意識もしない僕らとは違って、その価値をよく知り、畏敬の念さえ持っている人の存在が不自然に思えるほど無防備な自然の中で暮らしていることのありがたさを思ったツバメ返しの剣だった。