100回

 ある青年から以下のメールをもらった。僕が100回文章を書いてもこの内容より雄弁に過敏性腸症候群について語ることは出来ない。彼に快諾を頂いたのでまだ見ぬ同じトラブルで悩んでいる人達に贈る。彼の思いが届いてこの不思議な世界の常識を壊してくれることを望む。

ヤマト薬局様 こんにちは。以前、数年前に一度だけ過敏性腸症候群のガス型でご相談させていただいた者です。直接漢方薬の処方を頂いた訳ではありませんが、長年ブログを読ましていただき大変お世話になりました。大和さんとお話ししたことは一度もありませんが、僕は何年もブログを読ましていただいたのでつい長年お世話になったような錯覚に陥ってしまいます・・(笑)少し長くなりますが、お時間のある時にで構わないので読んでいただけたら嬉しいです。  僕は今、大学生です。最初にガスが出るようになったのは8年前、ちょうど中学受験でした。中学の頃、それがIBSという病気であることを知り、ネットで情報を集めるうちにガスだけでなくガス漏れにも悩みました。ちょっとした鼻息や音、仕草にすら怯えるようになり、毎日の授業が憂鬱でした。特に中学・高校の間は症状が最も酷く、この病気は一生治らないものだと絶望していました。  偶然見つけたヤマト薬局さんのブログを読み、この病気が治るのでないかと思いました。 漢方薬の処方を受けようか迷いましたが、踏み切れませんでした。その分時間がかかったのか何年かは期待と失望の繰り返しで、人間関係もなかなかうまくいいかず悩み続ける日々でした。しかし長い時間はかかりましたが、今では無事に憂鬱も無くなり、お腹も全く気になりません。便秘もガスも、ほとんど無くなってしまいました!先生はたくさんの症例をご覧になっていると思われるのでご存知かと思いますが、ガスが出やすい食べ物だとか臭いのある食べ物だとかが重要ではないと思います。今、悩んでいる人々にとっては、「どうすれば治るのか?」が一番気になると思います。しかし、僕はどうやって治ったかと聞かれて、「こうだ」と答えることはできません。もしネットで「こうだ」と言う人がいれば、それはサプリメントか消臭パンツを売りつけたい商売人でしょう。  治ったとか、治らない、ではないんだと思います。精神療法の森田療法では「治ったと思うことは脱線であり、日々の生活に全身で打ち込むその姿こそが全治」といった考えがあるそうですが、これはIBSであっても同じことだと思います。だから、お腹が気になっていようと、それはそれとして、やりたいこと・必要なことをやることが全てだと思います。もちろん口で言うのは簡単ですが、IBSに悩む人はほとんどの人が誰にも打ち明けられず、人間関係も疎遠になりがちで行動に移しにくいというのが実際で、自分自身も辛い日々でした。中学・高校生にとって、臭いというのは本当に辛い悩みです。またガスという症状は少し特殊ですし、友達や親にすら相談しずらいです。そのためにネットを中心としたコミュニティが増えてしまい、結果的に大和さんの仰るように素人同士が勝手に想像を膨らませてしまっています。  僕は先生のように漢方薬で救うこともできませんし、悩んでいる人達の相談に乗ることもきっとできません。夜回り先生で有名な水谷先生は、子供同士がメールやネットで相談に乗ることは危険だと仰っていました。その通りだと思います。ただ、大和さんには、身勝手なお願いですが、本当にたくさんの方々の力になってほしいです。  僕は今、大学で教育学を勉強しています。親を恨んではいませんが、病気が発症した頃は、親にひたすら勉強に追い立てられていました。もちろん他にも要因はあると思いますが、今の子供たちは本当に大変だと思います。大学でのゼミではいじめや不登校、子供の生きずらさについても考えていきたいです。  最近は部活(運動部です)でも上の立場となり、部の仲間とチームのために努力しています。ゼミも始まり、自分なりに教育について考えてみてます。そして、恋人が欲しいとは思っていませんでしたが、最近は気になる人もできました。ドラマに出てくるような漫画チックな青春ではないけれど、今の穏やかな生活を嬉しく思います。  思えば、絵に描いた青春を追い求めた気持ちが、かつて自分を追い込んだのかもしれません。先生はブログの中で、何一つ無駄なことはないと度々仰っていましたね。今ではようやくその意味も分かる気がします。  先生はこの病気にかかる人間は愛すべき性格の人だと言われますが、僕は自分勝手な人間でした。今でも、自分のことばかり考えているというのは変わらないかもしれません。 ただ、このつらい時間の中で、大事なことをたくさん学びました。僕の周りには心無い言葉を簡単に口に出す人達もいて、かつては自分もそうでしたが、そんな何気ないことが人によっては大きな傷になりうることも分かりました。まだまだ他人に素直になれない自分がいて、突っ張ってしまったり、無愛想になったりしてしまいますが、少しずつ少しずつなのかなあと思います。  まとまりのない文章になってしまいましたが、本当に心から感謝しています。 お身体にお気を付けて、これからも元気でいてください。それでは、失礼します。