配慮

 僕等まったく縁のない世界。湯水のようにお金を使える人たちの遊興の場。そうした中で恐らく活躍していた女性だろう。80を過ぎても威勢がいい。
 体調不良を訴えてしばしば遠くから電話をしてくるが、どう見ても病気のようには思えない。老いて不安なのだろう。必要があるのかないのか分からないが、気持ちが休まるような漢方薬を送っていた。
 夏の盛り、入院をして徹底的に調べてもらうことにしたらしい。9日入院しての結果はどこも異常なし。そんな方だから入院する病院もすごいし、診てくれる先生もすごい。ところがもっとすごいと思ったことがある。
 退院にあたって「その漢方の先生によくお礼を言っときなさい。まだ結果を連絡していないのならすぐしなさい」と言ったらしいのだ。入院中に僕の漢方薬の話をしていたらしいのだが、そのことを覚えておいてくれて、そう諭してくれたらしい。こんな田舎の吹けば飛ぶような薬局の薬を否定せずに、配慮までしてくれたことに感謝する。30年くらい前には、お医者さんに漢方薬の話をすると一笑に付され、多くの屈辱を味わってきたが、今はもう昔の話になってしまった。
 僕が病気ではないと常々言い続けたいたことを評価してくれたのか、あるいはほかの話題を評価してくれたのか分からないが、実力はともあれ誠を尽くしていれば認めてもらえる時もある。その先生には胡散臭い薬局の臭いはしなかったのだと思う。