固定費

 昨日、税理士の先生が面白いことを言ってくれた。なんと牛窓みたいな過疎の町でやっている薬局に有利な時代が来たって言われるのだ。お年寄りの比重がめっぽう高く、小学校も統合されかねないような先細りの町で、何が有利なのかと思うが、そこは税理士の先生、慰めなどで言ってくれているのではない。職業柄、数字で諸々の問題を判断されるから根拠は十分持っている。
 昨日は決算の報告に来てくださったのだが、あまり僕自身が興味もないし分からないから、そのことはそこそこに切り上げ、ひたすら頑張りますと僕が答えるいつものパターンなのだが、この時代に、門前薬局でもない僕の薬局がつぶれない理由として、やはり漢方薬の患者さんが多いことをあげられた。僕の薬局は田舎の昔ながらの薬局だから何でも屋なのだが、徐々に漢方薬の患者さんが増えてきた。人の目に触れる機会が都会の薬局に比べて圧倒的に少ないはずなのに、なぜか訪ねて来てくれる人がいる。その理由を数字のプロが導き出してくれたのだが、圧倒的に僕の漢方薬は「安い」のだそうだ。
 先生も興味があったらしく、インターネットで東京を始め都会の薬局の漢方薬の値段を調べたらしい。すると先生は「年収500万円以下の人は飲めない」と結論付けられた。ところが僕の漢方薬だったら、その半分の収入の人でも飲める。僕の漢方薬を先生も愛用しているから、効く漢方薬だと理解してくださっているから、安かろう悪かろうでない事は分かっておられる。先生いわく「都会は固定費が高いからあんな値段をつけなくてはならないのでしょうね」
 この固定費と言うのがよくわからないのだが、恐らく家賃とか人件費とか・・・・・そりゃあそうだろう、都会で暮らすにはお金がかかるように、商売も同じだろう。だから一人の相談者が来たら「じっくり時間をかけて相談」し、あれもこれも売りつけなければやっていけないのだ。漢方薬より一緒に飲むように勧められる健康食品のほうが高い。この時点でプロなら胡散臭さを見抜けるが素人にはありがたいのかもしれない。「高いものを売ってあげる方が親切」と豪語する輩が後を絶たない不思議な世界だ。
 牛窓で父の代から薬局をやっているから家賃ゼロ。人件費、家族だから適当。酒代、タバコ代、パチンコ代、スマホ代ゼロ。服買わない、腕時計持ったことがない。カメラ持ったことがない。携帯電話持ったことがない。夢、持ったことがない。希望、ない。
 一所懸命働いて得た患者さんのお金を横取りしない。金額に見合うお役に立つ。シンプルだが、固定費のいらない田舎の薬局ならできると先生は言われたのだ。