疲労

 これは希望なのか。一回りも年上の男性が、疲れなんか全く感じないと言う。疲労の中で毎日溺れそうになっている僕からしたら、あの断言は信じられないレベルではあるが、彼の説明を聞いて納得した。1日中することが無く、ボーッとしているらしい。すると疲れないのだそうだ。そんな経験は卒業してから皆無なので想像がつかないのだ。仕事熱心でもなく遊び人でもないが、何もしない時間は苦痛だった。両親が働き者だったから、両親が働いた時間くらいはせめて働かなければと思い、毎日12時間働いているが、よく考えたら、今の僕とは同じ薬局でも内容が全く異なる。時代ものんびりした時代からせわしない時代に変わっている。 歳をとることがこんなに疲労感を呼んでくるのかと思っていたが、ひょっとしたら、単に年相応の労働量を超えているのではと思い始めた。男性の話を聞いて、僕も仕事さえ辞めれば、爽快な日々を送れるのではと期待したのだ。目が覚めた時間を朝にすればいい。眠りに落ちた時間を夜にすればいい。お腹が空けば、スーパーの中をかごをぶら下げて歩けばいい。出来るなら40%OFFになる時間帯に行けばいい。刺身など握りなど、売れ残った奴を選べばいい。時にはちょっとはりこんでショコラなどチョコラなど買ってみればいい。 頑張らなくていいんだと、しっぽを振りながら野良犬が白線の中を歩いていく。そのくせ何処で覚えたのか知らないが、人間様のルールを守っている。いつかあのように心の鎖を外し精神を放浪させて、疲労の奴から逃れてみたいものだ。