五十歩百歩

 思わず画面にくぎ付けになった。老いるとはこんなに残酷なものなのかと見せつけられたから。
 恐らく彼は僕が実際に目の前にした男性の中で最もハンサムだった。娘が彼にだっこしてもらっている写真が残っているから、もう40年近く前に目の当たりにして、それ以後は、時々テレビ画面で見るくらいだった。特段興味がなかったから、テレビ番組を追いかけるようなこともせずに偶然見かける程度のものだから、1年と言わず何年も見ていない期間もあったはずだ。
 それなのに、今日まじまじとテレビ画面をのぞき込んだのは、嘗ての目を奪われるほどのハンサムな男性が、薬剤師と言う職業のフィルターを通してかもしれないが、「歳をとり過ぎていた」からだ。
 頬と言うか顔の肉が落ちて、目がぎょろついている。甲状腺の病気でも患っているのかと思われたが、そうではなく、目の周りの肉も落ちて、相対的にぎょろ目に見えたのだろう。痩せたと表現するよりも、やつれた、いやいや、やせこけたが一番特徴をつかんだ表現かもしれない。恐らく職業柄経済的にも恵まれていると思うのに、年金生活もままならない老人のように見えた。こうした風貌の人をメインキャスターに使って、番組が成り立つのだろうかと心配になるくらいだった。
 庶民がそれなりに衰えて醜くなるのはまだ当たり前と言うか、仕方ないが、映画スターが庶民を追い抜かんばかりの衰え方をするのは気の毒だ。たいていの場合、人様の視線は若返りの功があるものだが、彼にはそうは働かなかったのだろうか。
 スタート地点が素人とは全く異なるから、その落差が目立つのかもしれないが、こうしたときには五十歩百歩で生きてきた人間の方が強い。
「自由ってゆうのは、失うものが、何もないことさ~」

byいとうたかお

文春砲&FRIDAYスクープダブル炸裂!岸田翔太郎クビ。岸田首相が怖れるのは第二第三の首相公邸飲み会がバレること・・・元博報堂作家本間龍さんと一月万冊 - YouTube