悠久

  僕がユーチューブで時々物欲しそうに見る動画を、実体験している人がいた。42歳ころから何度も経験しているらしい。本人も懐かしかったのだろうし、僕は体験者の生の声だから興味深かったのとで、立ったまま1時間くらい話を聞いていた。向こうは腰かけていたから、思い出話に恍惚としているが、こちらは立ったままだから、足元から冷えてきて、途中から腰も心も冷えながら聞いていた。
 色々な観光地を巡り、どこどこはどうだったと簡単に説明してくれたが、そこは僕には興味を引くものはなかった。僕が知りたかったのは、敦賀か何処からか出発するフェリーの話だった。その方が42歳の時からフェリーでの北海道旅行を始めたと言うから、40年近く前の話から始まった。当時、北海道まで32時間かかったらしい。漁師でいくら海が好きだと言っても、32時間はきついだろうとこちらは思うが、本人は「寝とけばいいんじゃから」と意に介さない。「北へ上っていくのだから左側は海ばっかりで、右側に陸を見ながら行くの?」と尋ねると意外や意外、左右ほとんど海ばかりらしい。
 これで決まり。現代は高速船だからそこまで時間はかからないらしいが、いくらフェリーが好きだからと言って、海ばかりを見る忍耐力はない。僕が高松に行くのにフェリーを選ぶのは、いくつかの島を横切り、いくつかの港を眺め、いくつかの漁船と出会い、いくつかの大きな商船と出会い、いくつかの海鳥たちを眺め、いくつかの苦痛を捨てるためだ。何時間も海ばかりを眺めている自信はない。
 その男性の話を聞いて悟った。所詮僕は瀬戸内海だ。景色が頻繁に変わるのが性に合っている。悠久の時の流れは本来苦手だったから、有給もとったことがない。最近少しばかり覚えた「のんびりと」も、かなり物差しが違うと思う。1日のんびりしたらもう働きたくなるし、半日風邪などで伏せても働きたくなるし、箸が転んでも働きたくなるし。
 今は一人暮らしの漁師の話を聞いていて、思い立った。正月はフェリーで高松に行こう!

 

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