生垣

 僕が毎朝夕歩くテニスコートのそばにテニスコーチがある。と言ってもテニスコートが続いているのではない。立派な生垣で仕切られていて、中学校のではないコートは今だ嘗て見たことがない。そこはバブルのころ造られた有料のテニスコートだ。当時から中をのぞくことは出来なかったから、どのレベルのものか分からないが、その所有者は牛窓では有数の資産家だから、相当なものかもしれない。ただし、バブルがはじけるとともに閑古鳥が鳴いている。球を打つ音を20年近く聞いたことはない。
 ところが最近その生垣の向こうから、朝の8時過ぎに決まって10羽くらいの鵜が一斉に飛び立つ。数年来よく港でウミウを見かけるが、なぜか陸地(テニスコート)から飛び立つ。僕はそれがとても不思議で、池でもあるのだろうかとずっと疑問に思っていた。
 今日偶然そのテニスコートが見下ろせる家に住んでいる人が来たので、池や湿地があるのかどうか尋ねてみた。するとまだ以前のようにテニスコートだと教えてくれた。その人に僕の疑問をぶつけてみると、巣があるのではないかと言っていた。なるほど単純にウミウは海にいるから四六時中海にいるのかと思ったが、さすがに巣は陸地だろうなと思う。何が鵜の天敵か知らないが、テニスコートは安全なのだろう。
 およそ格好がいいとは言えない鵜だが、僕の家の100メートルくらいのところに住んでいるのだ。常識に欠ける僕が、僕より少しだけ知識がありそうな人から得た結論だが、彼は専門家でもないし、バードウォッチングを趣味とする人ではないから、巣があるだろうと言う結論は鵜呑みにはしていない。