電線

 今朝、ウォーキングのためにテニスコートに入ったのは6時過ぎ。すでに先客がいた。ただし先客2名は電線の上にいた。電線はどのくらい離れて張られているのか分からないが、数十センチくらいだろうか。わずか数十センチ離れた電線で、まさに正面と言うわけではないが少しだけずれて2名が止まっていた。一人は土鳩。一人は燕。頭上に大きなものが見えたので見上げるとこの二人だった。    
 燕同士、鳩同士ではないところに興味を惹かれ、目が離せないまま僕は歩き続けることになった。興味は何か偶然のなせる業か、種を超えた感情が芽生えているのかを確かめたかったのだ。もちろんそれを確かめるすべはないが、ほんの偶然ならすぐにどちらかが飛び立つと思ったのだ。 
 そこで目を離さずのウォーキングになったのだがテニスコート2面を一回りしても二人はそのままだった。土鳩は西の方をずっと見ながら止まっていたが、燕の方は時に背を向け、方向を変えていた。
 ちょうど2周したころ、ほとんど同時にそれぞれの方角に向かって飛び立った。燕は仲間が近くを飛んでいたが、土鳩は一人だった。判定は下せないが、僕には二人の友情が芽生えたように思えた。種を超えて、心を通わせたように思えたのだ。同じ鳩同士、同じ燕同士よりはるかに固い絆があってもいいと思う。僕らが日常、家族以上のつながりを感じ、家族以上に尊敬し、家族以上に話したり笑ったりすることが幸せなのと同じだ。
 今日のあの2羽の鳥たちは、僕にとっては二人だったのだ。