潔癖症

 どれだけ辛かろうと思う。その苦しみを誰かに打ち明けているのだろうか。それとも1人で戦っているのか。ただ敵はあまりにも強くて、一人でかかっていっても返り討ちに逢うだけだ。もう袋小路だ。脱出するチャンスはあまり無い。誰かに悲鳴を上げて助けを求めるべきだ。それしか脱出の方法は無い。  自分に触れるものの全てが汚いのだから、逃げ場は無い。多くの具体的な行動を代理の方が教えてくれたが想像を絶する。テレビのリモコン操作も、本のページ捲りも全て割り箸で行うのだからよほど器用でないと潔癖症にはなれない。その他のことは押して測るべきだ。  原因に思い当たることは無いと家族は言うが、原因が無くてこんなに追い詰められるはずが無い。時間をかけて話し合ってみると原因はかなり浮かび上がってきた。後は家族の対処の仕方だが、これを理解してもらうのに時間がかかった。ただ良く理解してもらえたので2週間後に早速効果が出た。漢方薬が効いたのか、家族の対処の仕方が効いたのかわからないが、入浴時間が1時間減ったらしい。具体的な成果で嬉しいが、本人の苦痛から言えばまだまだ序の口だ。  生きづらくてもだえ苦しんでいる人が多い。最早どなたの周りにも居るのではないか。職業的に僕が接する確率が高いのはあるかもしれないが、恐らくそうした人を知らない人のほうが今は少数派に属すると思う。見えないものや測れないものに価値を置かなくなってから、人間性は喪失し、人々の心が傷ついてきた。傷つけられた人が居場所をなくし、傷つけたやつらは大手を振って歩く。こんな理不尽がありとあらゆる分野で増殖している。人は何かを犠牲にして命を守る。潔癖症も例外ではない。