蕁麻疹、めまい、動悸、息苦しい、ストレスで胃が悪い、頭痛がする。これは今日ある家族から頂いた漢方薬の依頼だ。家族3人が飲んでくれていて、どれも確実に効果を出し、病院とも縁遠くなっている。  今日初めて相談のメールをくれた人がいる。病名を僕は初めて聞くものだったからインターネットで早速調べてみた。現代医学でも未だ原因は完全につきとめていないらしくて、難病と言えるのかもしれない。  上の家族の病名はありふれていて、漢方薬で十分対処できる。自然の材料(薬草)を使うことで治すことが出来るから、患者さんには好都合だ。ただ下の病気に関して言えば、原因も分からないようなものを漢方薬でお世話できるはずがない。漢方薬には漢方薬の守備範囲があって、経験を積めば積むほどそれが分かってくる。期待してくれた御本人はもとより、紹介してくれた鍼の先生にも申し訳ないが断るのが一番誠実だと思う。  これが若いときだったら一体僕はどう対処していただろう。答えは同じだと思う。若いときにもやはり断っただろう。理由は簡単だ。無知だからだ。無知はいいけれど無謀はよくない。あたるも八卦、あたらぬも八卦では申し訳ない。心苦しくて高くつく。それよりは無力を晒して気持ちが楽な方がいい。  以前にも書いた記憶があるが、僕の先輩達も歳をとると処方が簡単になってくる。芸の道なら円熟味を増してきたとでも表現されるのだが、漢方の世界ではどの表現が正しいのか分からない。人格で治すことが出来る境地に達するのか、あるいは臆病になるのか、似て非なるものだが、何故か同じような傾向を目撃する。そしていずれ僕も同じ道を歩む。その時に答が分かるだろう。